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初出詳細 |
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回天の門 | 回天の門 | 清河八郎 | お蓮 | 高知新聞他に77年2月12日から11月24日迄連載された作品。 武家の格式としてはそれほどではないが、かなり裕福な酒造家に生まれた清河八郎。跡取りの身分を捨てて、山師、策士といわれる人物になって行くさまを描いた超長編力作。藤沢周平の郷土愛的な心情も含まれるが、清河八郎を再評価させるに十分な内容を持つ作品。『雲奔る』とこの作品の、2作品における幕末から明治維新にかけての藤沢周平の知識の豊富さに驚くばかりであるが、その割に、当時を舞台とした作品が少ないのは何故か。司馬遼太郎との価値観の相違からあえて自ら踏み込む事を躊躇されたか。しかし、司馬遼太郎の『奇妙なり八郎』が納得できなかったのかもしれない。清河八郎は新撰組結成に際して活躍し、当初の目的とは別のことを考えていた人物。 |
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隠し剣孤影抄 | 邪剣竜尾返し | 檜山絃之助 | 赤沢弥伝次 | 10月号 | オール讀物76年10月号より78年3月号に断続連載された剣豪の剣技シリースをまとめた八編からなる。海坂藩を舞台にした作品。宿命剣鬼走りのみ別冊文藝春秋。藤沢作品には珍しく、多少濡れ場のある作品もあり、同時に剣豪作品でありながら、女性の存在が重要な役割を役割をしている。作家藤沢周平の作風が変化しだした中期前半(前期終盤?)の代表的な作品。剣名をよく付けたものである。その第一話。妻の体を利用してまでも、勝負を挑んでくる赤沢に、病床にある父の秘伝の竜尾返しを会得し、相手を破る。この秘伝は、一瞬背中を見せて相手が驚く隙を突く邪悪な剣であることを思い、二度と使ってはならないと心する。赤沢の妻の名前がその女としか書かれていない。 |
隠し剣孤影抄 | 臆病剣松風 | 瓜生新兵衛 | 満江 | 12月号 | かなりの剣豪と言う話を信じて結婚をしたが、どうもそうではないらしいと、常々感じていた妻。まわりの人々もいささか疑問に思っている。しかし夫は本当の剣士であったと言う話。松風とは受け身の剣で、守り抜くうちに相手を打ち負かす剣。 |
隠し剣孤影抄 | 暗殺剣虎ノ眼 | 牧達之助 | 清宮太四郎 | 77年3月号 | 藩の執政に絡み、牧達之助の父が惨殺される。お闇打ちであると言う。その刺客は虎ノ眼と言う秘剣を使うと言われている。刺客は殿様以外は誰も知らない。その相手は牧の妹志野の許婚の太四郎らしい。二人はもはや深い関係にある。藩の試合で二人が立ち会い達之助が勝つ。彼は無関係らしい。その後志野は兼光周助と結婚し、子供を産む。そして周助が子供に教えていることこそ虎ノ眼の極意。多少太四郎と周助の話の変化に違和感がある。因みに虎ノ眼とは夜眼の利く剣との事。 |
隠し剣孤影抄 | 必死剣鳥刺し | 兼見三左エ門 | 里尾 | 6月号 | 殿の愛妾を殺害したが、その訳を理解され罪を免れ殿の近習役となる。いずれ現れる刺客を斬るように命じられるが、それは罠であり、邪魔物を殺した後、自分も謀反人として殺される。その直前に鳥刺しの剣を使い、罠をかけた津田を道連れにする。姪の里尾との経緯はこの作家には珍しい題材。 |
隠し剣孤影抄 | 隠し剣鬼ノ爪 | 片桐宗蔵 | 狭間弥市郎 | 9月号 | 江戸で小姓頭に斬り付け牢に入っていた狭間が牢を破り、討手に片桐を指名してくる。二人は昔御前試合をした兄弟弟子。秘剣鬼ノ爪は一人伝授で片桐が授かったが、それを妬んで狭間は別の道場に移った経緯がある。秘剣は使わず 狭間を討つが、狭間の妻は体を与え助けてくれと奉行の堀に頼んでいた。それを裏切った堀に対して遂に秘剣を使って殺害する。その剣とは血を一切出さず、どんな武器であったかも分からない方法の剣との事。「雪明り」と共に映画『鬼の爪』のベースとなった作品。 |
隠し剣孤影抄 | 女人剣さざ波 | 浅見邦江 | 浅見俊之助 | 12月号 | 姉が美人であったので妹を嫁にもらったがこれが醜女。藩の不正を糺すと言う事で、飲み屋の女と情報を探り歩き、妻には見向きもしない。だがその結果は単に一方の勢力に荷担しただけの事であり、徒労に終わり相手方から果し合いを申し込まれる。剣は全く苦手な主に変わって、醜女の女房の邦江が立ち会い、さざ波を使って討ち取る。 |
隠し剣孤影抄 | 悲運剣芦刈り | 曽根次郎 | 卯女 | 78年3月号 | 既に婚約者奈津がいる曾根次郎。しかし兄の死亡によって寡婦となった嫂の誘いによって深い仲になってしまっている。1年後には家を去る約束が過ぎてもそのままの状態である。親友の兵馬に全てを相談するが世間に知れ、奈津の兄と果し合いになりこれを斬り出奔する。討手は何と親友兵馬。兵馬は師に芦刈剣の内容を伺い、見事に曾根次郎を倒す。主人公が負ける物語。 |
隠し剣孤影抄 | 宿命剣鬼走り | 小関十太夫 | 伊部帯刀 | 別冊文藝春秋 79年147特別号 |
十太夫と帯刀。今は隠居の身だが、かつての好敵手が最後は共に家を断絶させてまで戦う話。長男同士の果し合い、末娘の出奔と惨殺、次男の自害と続く小関家の凋落。怪魚伝説や若き時代の二人の葛藤を絡ませて物語は進み、最後は昔授けられていた鬼走りの秘剣を使い帯刀を討つが、自らも深手を負い自害する。実に悲惨な話である。本作品は、骨格、文章表現とも素晴らしい。本シリーズの他の作品より一際抜きんでた秀作であると思っている。(本編のみ別冊文藝春秋147号) |
隠し剣秋風抄 | 酒乱剣石割り | 弓削甚六 | 松宮左十郎 | 7月号 | オール讀物78年7月号より80年7月号に断続連載された作品集。『隠し剣孤影抄』に続く九編のシリーズもの。本作品も剣豪を扱ったものであるが、孤影抄より一層女性の存在が重要な役割をしている。その第一話。酒好きの甚六は秘剣石割を伝授された剣客。藩の乱れの原因である松宮親子の刺客を命じられる。妹の恨みもあり、討ち果たすが、酒を飲まないと戦えない性格を表現した作品。 |
隠し剣秋風抄 | 汚名剣双燕 | 八田康之助 | 関光弥 | 9月号 | 人を斬った友人の成敗に、一瞬の躊躇をして逃がした為、臆病者の汚名をきる。その躊躇は彼の妻に対する想いが心の奥深くにあったのかもしれない。汚名に耐えながら3年。道場主の継承試合では敗れたものの、藩の粛正に際して、自ら編み出した秘剣で相手を討ち取る。これで汚名も晴れるか。 |
隠し剣秋風抄 | 女難剣雷切り | 佐治惣六 | 服部九郎兵衛 | 12月号 | 十年前には見事な腕を披露した惣六だが、女房に死なれ、その後二人の妻や女中に逃げられ、風采が上がらない。再び嫁をもらう事になったが、その相手がこの話を持ってきた服部の妾。自分の妾を紹介するとは許せないと二人の密会の帰りを待ち伏せ、秘剣を使って二人の髷を切り落とす。とにかく持てない男の話。 |
隠し剣秋風抄 | 陽狂剣かげろう | 佐橋半之丞 | 増子新十郎 | 79年3月号 | 道場主の次女「乙江」と婚約していたが、藩主の若殿の側室として取られてしまった男の悲劇。気がふれた如く振る舞い、その原因となった男を見つけ出して秘剣を使って斬り捨てるが、乙江の死を聞き、本当に狂気となり、最後兄弟子の増子新十郎に討たれる。主役が死ぬ話。 |
隠し剣秋風抄 | 偏屈剣蟇ノ舌 | 馬飼庄蔵 | 植村弥吉郎 | 6月号 | 長らく執政を行ってきた派閥の雄に交代の危機が来る。殺害したい相手は、大目付に就任する植村。為政者は、偏屈者の庄蔵の性格を利用して唆す。庄蔵は思惑通り殺害するが、最終的には殺人犯として切腹を言い渡される。その席で秘剣を遣って使者を三人殺害、唆した相手を討ちに出て行く。 |
隠し剣秋風抄 | 好色剣流水 | 三谷助十郎 | 服部弥惣右エ門 | 9月号 | 自分ではそれなりの理由があると思っているが、世間からは女垂らしと見られている助十郎。人の女房の後を付け回したり、別れた妻との再婚話等を挟み、人妻「廸」を抱きしめるというようなことをして人に見られ、最後その夫に殺害される。日頃の鍛練を怠っていた為、秘剣を使っても敗れると言う話。 |
隠し剣秋風抄 | 暗黒剣千鳥 | 三崎修助 | 牧治部左エ門 | 12月号 | 末っ子の修助に入婿相手が見つかるが、修助は三年前家老の牧に頼まれて、仲間五人と共に奸物の執政を暗殺していた。その仲間が順次殺害されて、彼だけが最後の一人となる。相手は殺害を命令した牧家老。彼は昔千鳥と言う秘剣を授けられている事が判明。最後はその千鳥を打ち破る。主人公の相手が持っている秘剣技の話。 |
隠し剣秋風抄 | 孤立剣残月 | 小鹿七兵衛 | 鵜飼半十郎 | 80年3月号 | 15年前、七兵衛が上意討ちをした鵜飼家の弟がお家再興を許されるという。その弟の半十郎に兄の仇として果し合いを申し込まれる。四十を過ぎ剣にはもはや自信が無い。中止できなものか、助太刀してくれないかと色々頼むが相手にされない。女房は実家に帰ると言う。遂に果し合いとなって、劣勢であるがその時、妻が走り来る。その一瞬の隙に秘剣残月を使って打ち倒す。ゲーリークーパー主演『真昼の決闘』の如き作品?。 |
隠し剣秋風抄 | 盲目剣谺返し | 三村新之丞 | 島村藤弥 | 7月号 | 殿の毒味役で毒にあたり光を失って1年。妻の加世が上司の島村と不倫の関係にあると聞く。彼は妻がいなければ生きて行けないがやむなく離縁。闇の中で剣の稽古をするがままならない。家が断絶されない理由は、妻が島村に体を与えた為だろうと思っていたが、実態は殿様のありがたい配慮であった事を知った彼は、「武士の一分」を通すため島村に果し合いを申し込み、自分で編み出した谺返しの秘剣で辛くも討ち果たす。離縁していた加世との生活が戻るラストシーンは素晴らしい。映画『武士の一分』の原作。このシリーズは全体に戦いの場面の描写が特に素晴らしい。 |
風の果て | 風の果て | 桑山又左衛門 | 野瀬市之丞 | 週刊朝日83年10月14日号から84年8月10日号迄連載された武家小説の傑作。かつて「片貝道場」へ同期で入門した五人。一千石上士の嫡子「杉山鹿之助」以外は身分の差はあれど、同じような部屋住みの四人。晩年に到り執政の中心筆頭家老となった「桑山又左衛門」。方や厄介叔父という惨めな状態の「野瀬市之丞」の二人が、何故果し合いをする羽目になってしまったか。著者が週刊朝日というビッグメディアを対象に、壮大なスケールで描がく超大作。果し状を受け取った日から、決闘迄の五日間が過ぎ行く中で、幼馴染の頃からそれぞれが成長し、変化して行く経緯を語る形式で、最後に過去と現在が見事に融合して行く手法。謎に包まれている「市之丞」の本心は、市之丞に斬られた「一蔵」の心残りは、執政から失脚した「鹿之助」の心境は、貧しくも自らを倹しく生きる「庄六」の思いは・・。そして清廉潔白を心がけつつも清濁併せ呑み、筆頭家老に迄登りつめた「隼太」(又左衛門)の喜びと悲しみは・・。『蝉しぐれ』の方が評価は高いようであるが、個人的には最も好きな作品。 海坂藩作品のようで海坂藩ではないのは何故か?。本作品の年代研究は風の果ての年代をどうぞ。 |
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神隠し | 拐し | 辰平 | お高 | 問題小説 76年4月号 |
又二郎と言う悪党に娘を誘拐され、父親の辰平と許婚の勝蔵は、少しずつ金をせびられ困って居るが、実体は誘拐した犯人又二郎の方が娘に手を焼き、難儀していると言うコメディタッチの話。『失踪』(龍を見た男)と後半の雰囲気が同じような作品。 |
神隠し | 昔の仲間 | 宇兵衛 | 小説新潮 77年4月号 |
癌を宣告された主人公が、後々の問題を無くすため、昔の仲間をたずね殺害したところを見つかり、遂に御用となる。犯罪者の心理とはこのようなものか。それにしても張込みをこれほど執念深くするものか?多少気になるところではある。 | |
神隠し | 疫病神 | 信蔵 | 問題小説 77年5月号 |
十五年も前に家出をした父親が、すぐ近くに哀れな状態で生きていることから始まった新たな悲劇。結局父親は何も変わらず、昔のままの極道者であった。親と子の複雑な心情。人はある程度の年を経るともはや改心は無理なのか。軽いタッチの作品。 | |
神隠し | 告白 | 善衛門 | おたみ | 別冊小説新潮 78年春季号 |
娘を嫁にやった晩に善衛門が、妻のおたみにずっと気になっていた二十年ほど前の一日のふしぎな行動を問いただす。淡々と話すおたみ、その語り口のさわやかさ。積み重ねてきた夫婦のある種の形。静かな作品。 |
神隠し | 三年目 | おはる | グラフ山形 76年8月号 |
清作と言う行きずりの男から、三年まっていてくれといわれ、今日がその日である。ぎりぎりやってきたが、もう三年間ってほしい、と言われ悩むが結局追いかけて江戸に旅立つ。そのさきどうなるのかは読者の判断か。鶴ヶ岡城下近郊、越後寄りの『三瀬』と云う宿場町が舞台である。したがって海坂藩作品ではない、と考える。三瀬を訪問したことがあるが、笠取り峠から観た日本海はまさに海坂を彷彿させた。 | |
神隠し | 鬼 | サチ | 週刊小説 74/7/26日号 |
村の誰からも相手にされない醜女のサチ。一揆を唆し藩を追われた武家の新三郎をかくまう。一緒に生活する夢を見るが、男の思いは別にあり相手の軽い気持ちに、最後は自ら届け出て逮捕させる。女の複雑な気持ち。氷川郡とあるからこれも海坂藩作品ではないとしている。 | |
神隠し | 桃の木の下で | 志穂 | 亥八郎 | 週刊小説 75/3/28日号 |
殺害現場を目撃した志穂がその後何物かに命をねらわれる。目撃の話をした人は夫のみ。幼なじみの亥八郎に相談し、遂に犯人グループが夫を含めたものと判明する。最後は亥八郎に助けられ、初めて楽しい未来が来るような明るい結末へ。 |
神隠し | 小鶴 | 神名吉左衛門 | 登米 | 小説現代 77年12月号 |
夫婦仲が悪く、養子のきてもないような家。そこへ若い身元不明の娘の小鶴が出現する。これをめぐっての明るく楽しい話。最後娘は消えて行き、今までと同じ生活に戻るが、しかしそこには、ささやかな変化がある。これぞ藤沢作品の真髄と思わせる作品。ユーモア小説の部類に入るかもしれない。平安時代の竹取物語を思わせる。 |
神隠し | 暗い渦 | 信蔵 | おゆう | 小説現代 78年3月号 |
八年前に別れたおゆうを見かけた信蔵が、当時を思い出す形で話が進む。お互いそれなりに好きであるのに、今一つ進まない縁談。挙げ句にいまの女房と連れ添うようになったきっかけに想いをはせ。そしてあらためて思う今の幸せ。若い男の女に対する想像や行動が巧みに書かれる。 |
神隠し | 夜の雷雨 | おつね | おきく | 別冊小説新潮 78年夏季号 |
孫の清太はヤクザ物になり行方知れずで、弟に恵んでもらい哀れな生活しているおつねと、田舎出の娘おきくとの心の交流を描く作品。しかし、最後に清太が現れて・・その結末の壮絶さはすごい。それなりに奥の深い作品。題名もいい。 |
神隠し | 神隠し | 巳之助 | お品 | 別冊小説新潮 76年春季号 |
井沢屋のおかみさんが姿を消した。探索を頼まれた巳之助、三日後何も無かったように帰ってきたおかみさん。とぼける周囲。手代の忠吉に脅かされた事件であり、井沢屋の主が考えた奇妙な事件。短編ながらかなり手の込んだ作品で、藤沢周平氏の推理小説好きの面目躍如。長編作品の風格がある。 |
神谷玄次郎 捕物控 | 出会い茶屋参照 | ||||
檻車墨河を渡る | 雲奔る
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雲井龍雄 | ヨシ | 別冊文藝春秋74年129号に『雲奔る』130号に『檻車墨河を渡る』と言うU章タイトルで、発表されたが、単行本の出版に際して題名が『檻車墨河を渡る』となる。更に文庫化されたとき『雲奔る 小説・雲井龍雄』となった作品。米沢藩の俊才雲井龍雄、本名小島龍三郎の幕末時の止むにやまれぬ戦を通して生きた27年の生涯を描く。米沢藩の誕生からのいきさつを含む長編。龍雄の行動を国元・江戸・京都・そして東北まで、沢山の資料から実に克明に精査している。同時に幕末に関する知識の凄さに驚く。これだけの知識がありながら、幕末歴史小説が少ないのは何故か。不思議である。司馬遼太郎氏との距離をおいた関係の一面を想像したくなる。米沢藩シリーズはこの本が原点か。藤沢周平初の長編作品。 | |
消えた女 | 消えた女 (呼びかける女) |
伊之助 | おまさ | 赤旗日曜版78年1月1日から10月15日まで連載。最初の作品名は『呼びかける女』、単行本に際して題名を変更。彫師伊之助の捕物帳第一弾。元岡引で現在は彫師の伊之助が、昔の先輩から娘を探すよう依頼され探索を始める。材木問屋高麗屋の悪事を中心に展開する長編小説。高麗屋によって破産した同業者の子供の復讐、武士階級との癒着等複雑に展開する力作。ハードボイルドタッチであるが、比較的明るい書き方で、藤沢作品の変化がかなり現れている。『おまさ』はなかなかいい女である。第二弾『漆黒の霧の中で』に続く。体制派のいわゆる岡引が主人公ではなく、アウトサイダー彫師としたところが藤沢流。この考え方は全ての作品に共通するように思える。 | |
帰省 | 帰省 | 没後11年を経て刊行されたエッセー集。未刊行作品の新刊本としては「未刊行初期短編」についで2冊目の本である。4つの章からなる。各種媒体に発表した軽いエッセーから、かなり本格的な解説作品まで、バラエティに富んだ57編からなる。全集25にのみ編纂されていた作品(11)も本書に編纂されている。久々に嬉しい本である。 | |||
喜多川歌麿女絵草紙 | さくら花散る | おこん | 歌麿 | 6月号 | 原題『歌麿おんな絵暦』としてオール讀物75年6月号から76年4月号まで隔月連載された作品。単行本発刊に際して改題。稀代の浮世絵師として名高い歌麿を別の観点から描いた藤沢文学。蔦屋重三郎、滝沢馬琴との係わり、そして後半で写楽を登場させ、歌麿の苦悩、成長、衰退の姿を描く。『北斎』、『広重』そして本作品の歌麿で三部作が完成する。 但し完全な創作と思われる。6作品にはそれぞれの題材となった浮世絵が存在するもと思われるが、私には具体的には判らない。その第一話、蔦屋重三郎・若き日の滝沢馬琴、そしてこの作品の陰に主役である出戻りの弟子『千代』が登場。当時の浮世絵の世界を表現しつつ、迪蔵という病気持ちの亭主を持つ、鈴屋のお茶汲み女『おこん』を描く。一度ぐらい間違いがあっても・・自分を納得させる『おこん』を抱こうとする歌麿だが・・・。 |
喜多川歌麿女絵草紙 | 梅雨降る町で | おくら | 8月号 | 蔦屋の勧める役者絵に乗らない歌麿の心境を描きながら、『おくら』と言う女の作品を描く。この女、やたら男が好きになるが、すぐに飽きてしまう癖を持つ。しかし『幸七』という男と落ちつきそうな気配ではある。千代と歌麿の奇妙な関係が『おくら』そして千代の言葉を借りて表現される。 | |
喜多川歌麿女絵草紙 | 蜩の朝 | お糸 | 10月号 | 歌麿が「描いてやろう」と言っても喜ばなかった女『お糸』という女が主人公である。その理由が描いてもらうと有名になってしまうからだとのこと。書き始めたものの『お糸』は姿を消す。再会したものの『秀次郎』というヤクザ者によって遂に・・・。目立ちたくなかった哀れな女を描く。 | |
喜多川歌麿女絵草紙 | 赤い鱗雲 | お品 | 12月号 | 茶店に入って来たときから歌麿を惹きつけた女『お品』。彼女は子持ちの寡婦。『お品』に惚れて店に来る男と彼女が出来てしまったことを悟る歌麿。岡引の話によればその男は押込み強盗らしい。竜吉という男の動向を岡引の辰次に教えてしまった歌麿は『お品』への嫉妬とは思わないが、結果的に・・・。ここに写楽が登場。 | |
喜多川歌麿女絵草紙 | 霧にひとり | おさと | 76年3月号 | 千代が突然倒れ不安になる歌麿。千代に対する複雑な心境を語りつつ旗本に勤めていた『おさと』と言う女が登場。旗本勤めの間に主人である古賀と深い仲になり、未だに続いていると言う。縁談話などが挿入されるが、結局二人は心中。おさとは一命を取り留め、歌麿が励ます。最後が素晴らしい。 | |
喜多川歌麿女絵草紙 | 夜に凍えて | 千代 |
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4月号 | 役者絵に対抗する形で美人絵の話が持ち込まれるが、最近筆が痩せていると不安に思う歌麿。『千代』が嫁に行くと言う。引き止めるのは今しかないと思うが、唖者のように黙る歌麿。夜の街に出て昔の女を尋ねる歌麿。衰退してゆく歌麿の心情が巧みに書かれる。名前を書かない女との最後の描写が歌麿らしい?・・。全体を通して藤沢周平の写楽観が描かれる。 |
義民が駆ける | 義民が駆ける | 庄内農民が中心で特に主役なし |
本間辰之助 松平甚三郎 |
『歴史と人物』に75年8月号より76年6月号迄連載された藤沢周平初の長編作品。水野忠邦の提案による三方国替え(1830年代)。庄内藩領民は大挙して江戸に上り、遂に方針を変更させる。綿密に調査して書かれた歴史小説の長編力作。庄内藩の経営方針が領民に感謝されている書き方であるが(事実であろう)、ただ当時の百姓の本当の心境は、著者も触れているが農民のしたたかさかもしれない。それにしても三方国替えに対して、武家、農民、商人(本間家、加賀屋万平)などをそれぞれの立場から見事に描き出し、小説としても卓越した作品である。庄内藩は明治維新においても転封を強要されたが70万両の要求に対して半金で庄内に残ることが出来たとか。藩主藩民の結束が強かった事は事実のようである。明治維新で幕府側(賊軍)として敗れた藩がそのまま県の機構として継続した裏には西郷隆盛の配慮があったとか、意外である。藤沢作品として絶対に読まなければならない作品である。 | |
逆軍の旗 | 逆軍の旗 | 明智光秀 | 別冊小説新潮 73年秋季号 |
後書きによれば、この単行本の作品は全て実話と思われる。且つ力作ぞろいである。先ず単行本表題の作品。本能寺の変を連歌帥紹巴(じょうは)からみた光秀の動きを描く。謀反を起こすに到ったいきさつを、詳細な実史調査に基づき列挙し、また天下を取る意志の無かった気持ちがどのように変化していってか。非常にすばらしい出来の作品である。この時代の作品をもっと多く書いてほしかったという思いもあるが、そこが藤沢さんらしいところか。 | |
逆軍の旗 | 上意改まる | 片岡藤右衛門 | 郷見 | 小説歴史 75年創刊号 |
新庄城下、戸沢藩の物語。長兄のあまりに強引不遜なやり方が原因でライバルの謀略により、藩主から謹慎を受ける。が、五日後上意が変わり、兄弟三人に切腹が言い渡される。主人公、藤右衛門の壮絶な戦いの表現の見事さは圧巻。後日自害した郷見の哀れさが一段と光る。実話である。歴史小説としての位置づけであるが、最後の文章などは、いかにも時代小説としての藤沢作品と受け取れる、作者も拘りを見せていない。(後書きによる) |
逆軍の旗 | 二人の失踪人 | 丑太 | 歴史と人物 74年12月号 |
父、孫之丞を殺された兄弟二人が失踪し仇を求め歩く。七年後丑太が遂に見つけ、役人に捕らえてもらうが、敵討ちの許可が中々出ない。遂に縛られているままの相手を殺害、その後南部藩と水戸藩の立場の相違から、丑太が国元に帰るまでの色々ないきさつを描く。実話。 | |
逆軍の旗 | 幻にあらず | 美作当綱 | 別冊小説新潮 76年秋季号 |
上杉十五万石、貧乏国に現れた直丸、後の上杉鷹山。藩建て直しに懸命に働く武士の世界を描く。遺作となった『漆の実のみのる国』と重複する話。但し、主人公が異なる。中編小説ではあるが大きなテーマであり佳作である。藤沢さんのエッセーによると、中途半端に終わってしまったような気がしていて、いつか再度書きたいと思っていた。それが『漆の実のみのる国』になったとある。新しく手に入れた沢山の資料から少し間違っていたところもあるとか。 | |
凶刃 | 凶刃 | 青江又八郎 | 佐知 | 小説新潮89年3月号から91年5月号迄断続連載作品。用心棒日月抄第四弾。今回は用心棒の仕事はなく一つの長編作品である。十六年ぶり江戸へ公務で登場。藩の重大な秘密や、嗅足組の解散にまつわる活躍、佐知との交情と別れ。その別れの最後の言葉に、ささやかな楽しみを心に抱いて帰国する。読者が期待していたし、又作者も書きたかった作品で、本編がシリーズ最後の作品。そして『三屋清左衛門』に繋がる?。これは冗談です。 | |
霧の果て | 出会い茶屋参照 | ||||
雲奔る | 檻車墨河を渡る参照 | ||||
決闘の辻 | 二天の窟 | 宮本武蔵 | 鉢谷助九郎 | 小説現代 81年4月号 |
実在の剣豪五人を描いた歴史・時代小説の傑作作品集。最初の作品は、不敗神話のある宮本武蔵の敗れた事実を書いた大胆な歴史小説。鉢谷助九郎に敗れた宮本武蔵が不敗記録でなくなるのを恐れて、待ち伏せをしそして斬る。強者は如何なる手段を持っても相手を斬らなければならない?。磯貝勝太郎氏による文庫本の解説が圧巻である。 |
決闘の辻 | 死闘 | 神子上典膳 | 小説現代 83年11月号 |
後の剣豪、小野次郎右衛門忠明の若き修行時代を描いた作品。伊藤一刀斎から剣を学ぶ様子から始まるが、下総における戦いの表現は圧巻である。また後のエピソード等かなり克明に調べ上げた作品である。小野次郎衛門忠明は、次作『夜明けの月影』のも登場する。その中で、小野と宗矩の剣の奥行きの相違が書かれているが、納得できる文章である。すなわち、『一本の剣が内包する無限の世界』に気付いているか否かである。 | |
決闘の辻 | 夜明けの月影 | 柳生但馬守宗矩 | 小関八十郎 | 小説現代 84年10月号 |
政治の世界に存在感を出そうとする柳生但馬守の思いを背景に、坂崎出羽守の謀反を押さえるため、策を弄しその上で、自らも政治の罠にはまった柳生但馬守に対して、襲撃をする小関八十郎。島原の乱における将軍家光への進言等、政治家としての宗矩の野心を描く力作。題名は小関八十郎との決闘の場面からと思われる。解説の磯貝勝太郎氏は淡路守の謀反に関して、歴史の事実と多少異なる点を書いている。これも参考となる書き物である。多少冗長的の感もあるが、柳生一族の歴史を丹念に描き、幕閣として登場する多くの人物の年齢等、かなりのエネルギーをかけたのではあるまいか。本書の中でも傑出した作品であろう。改めて思う藤沢周平の力量の凄さ。 |
決闘の辻 | 師弟剣 | 土子泥之助 | 兎角 |
小説現代 85年1月号 |
戦国時代の終盤、関東下総の覇権争いと歴史の流れを背景に、主家の没落、師の諸岡一羽斎の病などに見切りを付け出奔し、後に流派を曲げて江戸で微塵流を名乗った弟子『兎角』。これを許せぬ兄弟弟子の土子泥之助と岩間小熊。籤引きの結果、小熊が先陣として江戸に出立し、見事に目的を達成するが・・・しかし悲報が届き、その時泥之助は・・・。 |
決闘の辻 | 飛ぶ猿 | 住吉波四郎 | 愛洲太郎左衛門 | 小説現代 85年5月号 |
父の仇、愛洲太郎左衛門を求め仇討ちに旅立つ。父の死に関して、いくつもの異なった話を聞かされていた主人公が遂に会うことが出来、そして対決。剣技の奥深さを知り、おふくの居る故郷に帰る。この本『決闘の辻』は全編とも資料を駆使して調べ上げたと推測され、一行一行の文章に重みがあり、力作揃いである。 |
玄鳥 | 玄鳥 | 路 | 曽根兵六 | 文学界 86年8月号 |
どことなく粗忽な兵六が、上意打ちに失敗し最後はみずからが追われる立場となるが、幼なじみの『路』から父親伝授の秘剣の最後の一説を聞き旅に立つ。あたかも巣を壊され、再び帰るとことのない燕のように。それにしても路の夫の冷たさは一体なになのか、理解できない、このような人間も世の中には存在するのか。 |
玄鳥 | 三月の鮠 | 窪井信次郎 | 葉津 | オール読物 89年6月号 |
御前試合でなぜか完敗した主人公。その後生活に覇気が無くなり、釣り三昧で暮らす。ふと知り合った神社の巫女との関わりから、翌年の試合に勝ち、藩の不正に荷担する一味を破り、結果として巫女の仇を討つことになる。最後の文章表現はいつもながらすばらしい。秀作・・好きな短編である。 |
玄鳥 | 闇討ち | 興津三左衛門 | 植田与十郎 | オール読物 89年12月号 |
かつて自分が減らしてしまった家禄の嵩上げをしようと、罠があることを承知で上司の依頼を受け闇討ちをしたが失敗し、その上殺害された親友権兵衛の仇を討つ老人二人の話。どちらが主役とも言えない。二人の巧妙な手段に、上司も目をつむる。老いたりとはいえ、お家の正義に荷担した武士の魂を描く。 |
玄鳥 | 鷦鷯 | 横山新左衛門 | 品 | オール読物 90年6月号 |
題名『みそさざい』。諸諸の費用の為同じ武家から借金をしている。その金貸しから倅の嫁に娘の品を、と言われ借金の為に娘は売らぬと断るが、上意打ちの仕事をしたその倅の働きに、横山新左衛門の考え方が変わる。ユーモアの利いた一つの藤沢文学パターン。『臍曲がり新左 』と類似した作品で、新左衛門と言う名前は2つの作品に登場するが(個人的な調査)共にユーモア作品である。 |
玄鳥 | 浦島 | 御手洗孫六 | 文藝春秋 90年3月号 |
酒の失敗から左遷されていた男が、十八年ぶりに無実が証明されもとの地位の収まる。が、年齢的にもなじめず、結局自ら事件を起こし、再びなじんだ十八年間の職場に戻る。藤沢作品としては、珍しく個人的には感動無し。しかしこの作品を高く評価する評論家は多い。この作品の良さが判らないのが残念。 | |
孤剣 | 剣鬼 (剣鬼を追う) |
弥津 | 別冊小説新潮 78年秋季号 |
別冊小説新潮78年秋季号より小説新潮80年3月号迄断続連載された用心棒日月抄の第二弾。間宮中老の新体制は道半ば。藩主毒殺の証拠書類を大富静馬が持ち去った為、これが無いと同罪の人名が明確にならない。公儀隠密も藩の取り潰し材料にこれを狙っている。反対派に知られずこれを取り戻すため公に出来ず、中老の命令により仕方なく再び脱藩し、又八郎は江戸へ来る。今回からこれを取り戻す苦労と、それを助ける佐知との厚情が縦糸となる。食わんが為の用心棒の仕事は横糸となり、又八郎の使命が中心になって行く長編小説の形になる。嗅足組の存在と佐知の協力により、最後は宿敵大富静馬を倒すが・・。佐知は嫁に行くかもしれないと言う。一度だけの思い出を胸に、春の別れ。そして第三弾『刺客』につながる。その第一話。江戸に来た経緯、嗅足組の頭領の娘佐知との出会いの後、細谷が失態を犯した仕事の手伝い。旗本村瀬の子供が攫われた事件、奥方の俳諧の仲間の深沢清次郎の犯行。これを突き止め峰討ちにし、無事子息を救い出す。佐知が大富静馬を見つけるが、公儀隠密の邪魔が入り逃がす。 | |
孤剣 | 恫し文 | 清助 | およね | 別冊小説新潮 78年冬季号 |
元盗人の越前屋藤兵衛が昔の仲間に脅されている話を耳にした手代が、仕組んだおどしに絡む事件。手代は百両の金を盗んで出奔するが、盗人の仲間の押し込みに対しては用心棒の仕事をする。佐知が大富静馬が築地にいる事を探ってくるが、ここでも公儀隠密の邪魔が入り、静馬を敢えて逃がす。同じ用心棒で今回の相棒米坂八内は中々出来る男。 |
孤剣 | 誘拐 | ゆみ | とよ | 小説新潮 79年5月号 |
両親を殺された十三歳の娘を守る仕事。飯炊きから洗濯となんでも出来る子。佐知が大富に監禁された情報が入り、これを助け出している間に、娘がいなくなる。結局母親の昔の男の誘拐と分かり、無事連れ戻す。佐知を助け出したその一瞬、二人はかたく抱き合う。誰にも分からないように。大富はかすり傷を負い逃げる。 |
孤剣 | 凶盗 | 平右衛門 | 7月号 | 早く書類を取り戻せと言う国元の間宮中老からの催促。今度の仕事は細谷、米坂の三人で一組。名うての盗人が油屋を襲うという。口入れやの吉蔵も悩むほどかなり危険な仕事。不審な事がいくつかあり、予想どおり現われ、十四・五人の盗人の内七人を斬り無事に終わる。その間佐知が大富の住処を見つける。事件終了後、その住処を尋ね又八郎と対決するが大富は逃げる。しかし、日記帳と手紙を手にする。肝心の連判状は見つからない。 | |
孤剣 | 奇妙な罠 | 小牧屋の隠居 | はつ | 9月号 | たまに俳諧の連座で使うだけで、普段は空き家の留守番と言う楽な仕事。喜んで引き受けたが、実は公儀隠密が仕掛けた罠。又八郎が見事に罠にかかり、大富の行方を追及される。強烈な責めに遭うが、佐知によって救い出される。細谷は危険な用心棒を引き受けるが、最後又八郎が助太刀して助ける。佐知は組織を使って大富の行方を捜すと言う。 |
孤剣 | 凩の用心棒 | 米坂八内 | おけい | 11月号 | 佐知と逢い、国元の様子が多少わかる。更に江戸屋敷の奥村の動きから大富静馬の居所を突き止めるが、又も駄目。前回細谷を助太刀して追加で雇われたので懐が暖かい。今回の話は、僚友米坂の窮地を救う話。商人の娘の護衛を頼まれたが、旗本の三男坊に連れ去られ、これを取り戻す話。米坂の女房が登場し、その心配ぶりが面白い。 |
孤剣 | 債鬼 | 銭谷徳兵衛 | 80年1月号 | 江戸の大火・又八郎の風邪・佐知の訪問・大富静馬が幕府の老中に近づいている情報等の話の後、今回は高利貸しの用心棒の話。貸した金が取り返せない場合は、相手の武家の女房をもかたに取ると言う悪徳商人。取られた武家が現れるが、この男もだらしないし、武家の女房もこれ又逃げもしない不思議。楽な仕事であるが嫌になり早々に切り上げる。米坂の帰参が叶う、この辺が実に巧みである。 | |
孤剣 | 春のわかれ | 瀬尾弥次兵衛 | 久米新三郎 | 3月号 | 国元に帰る米坂、当ての無い細谷、それぞれの心境を語り、江戸屋敷と裏の話し合いをし、江戸屋敷の二人と細谷、佐知、そして又八郎の五人で公儀隠密および大富静馬と対決、遂に連番状を取り戻す。戦いの描写は相変わらず素晴らしい。青江又八郎は帰国する、佐知は嫁に行くかもしれないと言う。別れ際、遂に耐えられなくなって、二人は一夜を共にする。そして翌日の別れ。遠くから見送る佐知、千住上宿のはずれから。これで終わりか、いや、なんと『刺客』へと繋がる。 |