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藤沢周平作品内容4

た 〜 の
単行本書籍名 作 品 名 主人公 脇役  初出詳細 内         容
竹光始末 遠方より来る 三崎甚平 好江 小説現代
76年1月号
突然現れた浪人・曽我平九郎のあつかましさ、哀れさと、主人公・女房の対応の面白さ。当時の浪人の生活観がよく書かれていると同時に、藩主を持つものの優越感や有難さがよく分かる。佳作。
竹光始末 竹光始末 小黒丹十郎 多美 小説新潮
75年11月号
浪人小黒丹十郎の切ない就職活動。人一人を殺害することが就職の条件。貧乏生活のためやむをえず竹光であるた事をおしえてしまった為、結果的に相手の闘争心をあおり斬り合いとなるが、最後に小刀で目的を果たす。ややユーモアにあふれる話。表題作にふさわしい。それにしても小黒が浪々の身と為った経緯を書いた文章は重みがある。ここを読んだだけで関が原前後の著者の博識に驚く。映画『たそがれ清兵衛』に挿入された作品。
竹光始末 恐妻の剣 馬場作十郎 初江 小説宝石
74年8月号
婿の立場の主人公が、他の藩から預かっている二人の逃亡者を殺害する経過と、妻の悪態な言葉の数々。数々の言葉の面白さが楽しめる作品。芝居にしたら面白そうである。
竹光始末 石を抱く 直太 お仲 問題小説
75年10月号
奉公人の直太と主人の妻お仲が思ってもいなかった許されぬ関係に。その想いからであろうか、お仲の弟の罪を甘んじて受ける直太の心の内のあわれ、そしてお仲との心の繋がり。
竹光始末 冬の終わりに 磯吉 お静 小説宝石
75年4月号
博打で五十両を得たため追い回される恐怖と、匿ってくれたお静とその子の病気とのかかわり。その亭主の出現と死、切ない中にかすかに見える暖かい灯火。そして少しずつ生まれる勇気。春はすぐそこまで・・。暗い中にもなぜか爽やかさが残る。
竹光始末 乱心 新谷弥四郎 茅乃 小説宝石
76年1月号
妻が不貞をしているという噂をもつ男と一緒に、江戸に出府した主人公弥四郎。客観的に彼がみた男に対する観察。夫自身が振りまいたと思われる行状など、病を持った夫婦の切なさを描く。海坂藩作品ではなく『粟野藩』である。
たそがれ清兵衛 たそがれ清兵衛 井口清兵衛 奈美 小説新潮
83年9月号
主人公の容貌・性格や環境を作品名にした一連の作品からなる本。83年から88年にかけて、小説新潮に断続的に掲載されたそれぞれ単独の作品。その第一作。凶作続きから、藩の執政が二つの派に分かれ、上意打の役目を言い渡された主人公。出世欲も無く、病気の妻女の面倒を見る毎日。人からたそがれと言われているが、女房の病気を治す医者の手当て金を期待して、やむを得ず引きうけ大役を果たす。単行本の表題作。藤沢周平の人生観が反映されたように思えるが・・・思い過ごしか。発表した年度にも意味があるような・・無上の喜びと失意の年から20年。映画『たそがれ清兵衛』にタイトルと主人公のイメージが利用された作品。
たそがれ清兵衛 うらなり与右衛門 三栗与右衛門 多加 小説新潮
84年12月号
浮いた話なぞ絶対に無い男に噂が立つ。その噂が大役を果たす仕事の邪魔をするためだったと気づく。噂が元で結局役に立てなかったが後で埋め合わせをする。武芸の立つ男の話。うらなりは主人公の顔立ち。
たそがれ清兵衛 ごますり甚内 川波甚内    小説新潮
85年7月号
家禄を減らされた武士が、それを元に戻すため日頃からごますりをしている。仕事を頼まれやり遂げるが、それは執政の悪への荷担であった。正義の為、結局再度危険な仕事をする羽目になり見事な腕を披露する。
たそがれ清兵衛 ど忘れ万六 樋口万六 亀代 小説新潮
86年2月号
物忘れが多くなり隠居の身となった主人公。嫁の話を聞き、有りもしない噂を立てた男に、久しぶりに剣を使う。この話は珍しく峰打ちで終わる。
たそがれ清兵衛 だんまり弥助 杉内弥助    小説新潮
87年7月号
自分の軽率な言葉から従妹を自裁させ、以降無口になった弥助。その時から唾棄すべき男として心に残った服部。二派に分かれた執政の会議の場で突如雄弁になって意見をのべる。結局その通りになるが、服部は生き延びる。そして決闘の場面へ。
たそがれ清兵衛 かが泣き半平 鏑木半平    小説新潮
87年9月号
かが泣きとはやや大袈裟に愚痴をこぼす人の意味との解説があり、物語は始まる。普請工事の完了の褒美を持参し、美しい後家と会ったことが弱みとなって、上意打ちの役目を強要されやむなく討ち果たす。そして恩賞もなくただ働きを嘆く。すなわち結局かが泣きをする。決闘の場面の描写はすばらしい。
たそがれ清兵衛 日和見与次郎 藤江与次郎    小説新潮
88年1月号
父親の悲劇から、どちらの派閥にも属さないことにしている与次郎。両派の執拗な誘いにも耳を貸さない。両派の葛藤の後勝負がつくが、敗れた側の淵上は旨く立ち回り生き延びる。しかし従姉の織尾の嫁ぎ先の火事事件の犯人でもある淵上を許せず最後に斬る。
たそがれ清兵衛 祝い人助八 伊部助八 波津 小説新潮
88年6月号
女房に死なれ、かえってのんびりしている助八。風呂にも入らず不潔この上ない侍でこれを『ほいと』と言う解説あり。波津と離縁した旧夫のしつこさについ手をかし、剣客としての腕を知られてしまう。結局この為上意打ちを命ぜられ討ち果たす。決闘の場面が省略された替わりに、このシリーズで唯一女性が描かれた作品。最後がいい。秀作。表題にしてもよい出来映えであるが、ほいとという言葉がマイナーか?。映画『たそがれ清兵衛』の骨格となった作品。
乳のごとき故郷 乳のごとき故郷       2010年4月、鶴岡市立「藤沢周平記念館」の開館を記念して編纂・刊行されたエッセー集。生まれ育った庄内のこと、少年時代に記憶、忘れがたき人人などの思いを綴った、心に沁みる全48編(本の帯より)。既に出版済みのエッセーのうち、上記のような作品を集約し出版された。このように一冊に纏められると、故郷への想いがどのようなものであったかが、よく理解出来るような気がする。しかし、本当の真意は凡人にはやはり計り知れない。
出会い茶屋 針の光 年藏    6月号 小説推理75年6月号より80年5月号迄断続連載された作品。発表時『神谷玄次郎捕物控』単行本刊行時『出会茶屋』のタイトルで改題し出版、更に文庫刊行に際して『霧の果』てと改題した作品。長編小説であるが1話形式でもあるため、独立した作品として整理した。北の定回り同心神谷玄次郎、十四歳の時亡くなった母、妹の死の原因と、父の担当した事件への思いを縦糸に、短編の捕物を横糸にした作品。脇役に、蔵前北の小料理屋の女主、お津世、岡引銀蔵が登場。彼らが常に主役であり、その他に主役というほどの人物は特に現れない。内容的には単純な事件を扱っているが、結構読ませる。八話からなる。その第一話。水茶屋で酒を飲んだ後、女を連れ出し、抱きしめている間に殺しをする変質者の話。ここで主な登場人物と神谷が裏の世界の人々とも付き合いがあることをそれとなく伝えている。
出会い茶屋 虚ろな家 弥之助    8月号 借金の返済に困った商人と、岡引の弥之助が仕組んだ娘誘拐の狂言事件。下っ引きの行方不明、商家の娘八重の誘拐が図らずも関連していたという話。早々から岡引を犯人に仕立てると言うかなり手の込んだ作品である。
出会い茶屋 春の闇 筆之助    76年5月号 借金の為、好きでもない男と婚約させられ、貰った簪を好きな手代との逢い引きでなくしてしまった事から始まる殺人事件。手代が犯人と思われたが・・許婚の男が犯人と判る。ウンスン歌留多の札と登場人物を対応させた面白い作品。
出会い茶屋 酔いどれ死体 孫次郎    79年5月号 お津世とのいきさつ、玄次郎の今の心境を語りながら新しい事件を解決する。浮浪者の物乞いの老人が殺される。金も持たない老人殺害の理由が分からない。調べるうちに無類の酒好きと判明。昔知り合いの男の逢い引きを垣間見たことから、酒代をゆすっていたことで殺害されたことが判明。犯人は無類の潔癖症で、その汚さが殺害の理由と言う。
出会い茶屋 青い卵 長吉  文吉  8月号 戸袋に鳥が巣を懸け卵まで産んでいると言う他愛の無い話から始まり、老婆の殺人強盗事件の犯人が、小間物屋の長吉であるとされるが、本当の仕掛人は小さな子供文吉ではなかったか?と言う話。うまいタイトルである。
出会い茶屋 日照雨 惣六    11月号 母と妹の殺害事件の資料の一部が見つかり、事件の半分が見えてくる。縦糸のはなしが全体を流れる中、当面の事件として米屋の次男坊が殺される事件が発生。女中にやたら手を出す次男坊の、過去から今までの女中をすべて洗い出し、一人の被害者の父親が犯人と判明。
出会い茶屋 出会茶屋 稲富清十郎    80年2月号 母と妹の事件を暇を見ては調べているが、父の時代の岡引を探し出すことに成功。縦糸が少しずつほぐれてくる。寺で行っていた祈祷に裏がある事件でありそうな気配。そんな時、畳屋の女房が襲われて怪我をする事件。前からつけられていたとの事。その裏に一度の間違いであるが、同業者の男と出会い茶屋で密会し、その時押し込みの相談をしている輩の顔を見たために監視されていたと言う話。普通密会した場合は、したほうが強請られる場合が多いが・・。縦糸のほうは少し進み、多少霧が晴れ始める。
出会い茶屋 霧の果て 神谷玄次郎 お津世 5月号 印南数馬・14年前の寺社奉行の寺社役同心。やっと巡り合え、お津世の店で話を聞く事になった。寺と井筒屋に繋がりがあるらしい。父親が調べていた事件は雪駄屋のお佐代殺害と言う事件と判る。井筒屋を調べる中、独自に井筒屋を尋ねた印南が殺される。事件そのもは祈祷の裏を知っていた井筒屋が、ダニのような男から逃れるため、五千石の旗本で老中の妾を利用した犯罪と分かる。母、妹の仇を遂に斬り捨て、水野老中に相対するが・・早くお津世の顔が見たい。
『神谷玄次郎捕物控』・『出会茶屋』・『霧の果』てと改題した理由もなんとなく理解できる。したがって結果的に一つの作品として扱うべきかも知れない。
天保悪党伝 蚊喰鳥 片岡直次郎 三千歳 月刊カドカワ
85年6月号
1985年から1992年迄7年間に亘って断続的に書かれた連載作品。掲載誌も『月刊カドカワ』から途中『野生時代』に変わった作品で、藤沢周平さんに何らかの思いがあったような気がする。天保六花撰と呼ばれた六人のお話。それぞれが絡み合い、長編小説のようでもあるが、長編連作として、一応独立した作品とした。この作品の特徴は、各作品では結論を出さずに終わる形式。次作でその後の様子を伝えるスタイルである。先ず登場するのが直侍(なおざむらい)事・片岡直次郎。水も滴るいい男。御家人やくざで嫌われ者ながら女には持てる。花魁の三千歳と相思相愛、河内山宗俊の助けを借りて足抜けさせるが、金が無い為森田屋清蔵に三千歳を預ける羽目に。それでも間夫をきめこみ忍んで行く。蚊喰鳥(かくいどり)とは蝙蝠のこと。見事なタイトルである。
天保悪党伝 闇のつぶて 金子市之丞 森田屋清蔵 月刊カドカワ
85年11月号
用心棒をしたお礼で今では道場主となったが、花魁の三千歳に逢う金欲しさに辻斬りまでする金子市之丞。売り飛ばされた丑松の妹玉を救い出したりするが、丑松と仕掛けた恐喝の芝居で、森田屋清蔵にあしらわれ惨めな思いをする。しかも市之丞の過去を知っているらしい。森田屋清蔵とは何者か。此処までで、河内山宗俊・片岡直次郎・森田屋清蔵・金子市之丞・くらやみの丑松・三千歳の天保六花撰がすべて出そろう。
天保悪党伝 赤い狐 森田屋清蔵 金子市之丞 野生時代
89年1月号
森田屋清蔵。鷹狩の不手際で惨殺された本庄藩の足軽の子で40年来の恨みを持つ商人。裏と表の二股稼業の大悪党。又三千歳の上客。財政逼迫の本庄藩をだまし、藩が取り潰しとなる様な復讐を計画。金子市之丞、くらやみの丑松の協力で仕掛けは全て済み自分は江戸から消える。結末は後程。
天保悪党伝 泣き虫小僧 くらやみの丑松 金子市之丞 野生時代
90年10月号
料理人の腕を持つくらやみの丑松が、河内山の紹介で料理屋『花垣』に務める。ところがこの店借金があり、政次郎という男が利息がわりにおかみの体を弄ぶと言う悲惨な状態。丑松が挑むが簡単にあしらわれ、挙げ句の果てにおかみは自害。亭主から受け取った十両で、金子市之丞を雇い仇を討つ。この作品は悪事のない話。おかみに対する丑松の気持ちの微妙さの表現がいい。
天保悪党伝 三千歳たそがれ 三千歳 片岡直次郎 野生時代
91年5月号
直次郎には嫌気が差し、森田屋は江戸におらず市之丞が恋しい花魁の三千歳。やっと現れたら下総流山に身を隠すと言う。一方河内山の指示で現れた直次郎。三千歳に水戸藩の影富(富くじの飲み屋行為)の証拠を水戸藩のお客比企から、影富をやっている場所を掴むよう依頼。市之丞に金を渡したい一心から引き受ける。その後市之丞は役人を斬り江戸を離れる。最後直次郎が三千歳になかなかの言葉を言う。
天保悪党伝 悪党の秋 河内山宗俊 森田屋清蔵 野生時代
92年1月号
水戸藩を相手に河内山が二百両の脅しに成功する話。しかしその後の彼は町奉行から徹底的に悪事を探索され・・。本庄藩に仕掛けた罠が意外な結果に終わり、森田屋の店もこれまた思いもかけない結果となり、森田屋は不本意ながら江戸に舞い戻る。詫びを言う為番頭の女房を探し出すが、危うく殺されそうになるところを市之丞に助けられ、全てすっきりしたので三次郎と共に河内山の手助けをする。
長門守の陰謀 夢ぞ見し 甚兵衛 昌江 小説現代
77年9月号
この本は5つの作品からなっているが、最後の『長門守の陰謀』(タイトル作品)のみ異質な気がする。一冊の本としての編集に違和感を覚える、全集ではさすがに分離している。その一作目。無口な夫、何かをしているようであるが皆目見当が付かない。そこへ一人の若い武士が居候する。実は後の藩主であるが、面倒をみ後で自分の夫が大変なことをしていたことが判明、家は加増される。
長門守の陰謀 春の雪 みさ     小説宝石
77年2月号
材木屋に奉公する主人公『みさ』が、そつの無い作次郎からうすのろの茂太に気持ちが変わって行くさまを描く。結局一人店を去り新しい旅立ちをする。残日録の『みさ』も最後は街を後にする。『みさ』とはそういう女か?実はそうでもない。結構しぶとい女もいる。
長門守の陰謀 夕べの光 おりん 幸助 小説宝石
77年7月号
夫に死なれ、先妻の子供幸助を乳飲み子から育てた『おりん』。幾つかの嫁ぎ話がありながら、結局うまく立ち回れない女のあわれ。藤沢周平氏は、こういう女を書かせると実にうまい。
長門守の陰謀 遠い少女 鶴蔵 おこん 小説現代
77年3月号
小間物屋を営む堅物の鶴蔵。四十を過ぎてからひょんなことで、三十五年ぶりにあった『おこん』。彼女の足を洗うためと言う話に、二十五両を渡そうとするが、そこへ岡引が現れ、この女には借金はないよと言う。女の真実がそこにはっきりと見えてくる。海鳴りとは正反対の話。
長門守の陰謀 長門守の陰謀 高力喜兵衛    歴史読本
76年12月号
いわゆるお家騒動もの。庄内藩を乗っ取る計画の長門守、それを阻止しようとする人々、最後の止めが強烈で見事な作品となっている。二代藩主争いをめぐる闘争。事実を扱った歴史小説。藤沢周平の歴史小説は、比較的重いものが多いが、本作品はかるく仕上げている。しかし短編としては素晴らしい作品であろう。
海坂藩作品の源流となった貴重な作品である。おぼろげだった海坂藩の姿が、本作品をベースとして鮮明になってきたのではあるまいか。
人間の檻 戻って来た罪 彦六    4月号 小説現代82年4月号から83年2月号まで断続連載。獄医立花登の第四弾最終編。戻ってきた罪等6編からなる。その第一話。余命幾ばくも無い彦蔵が死ぬ前に自分の前科を登に話す。三十年前、磯六と言う男と誘拐事件を起こし、人を二人も殺していると言う。人相を聞いて思い当たる人物が浮かぶ。かつて病気を見てやった事のある男。暫く見張っているうちに事件を起こす。小間物屋に恨みを持つ男で頭がやられている人物であった。
人間の檻 見張り 酉蔵 おとし 6月号 牢を出た二人の男が、押し込みを行う相談をしていたと言う。もう一人仲間に入れるらしく、それが登の知っている酉蔵と言う名前。酉蔵に止めるよう忠告するが引き受けてしまう。危険の大きさに気づくが止めるに止められない。結局登達が芝居を打って酉蔵を助ける。
人間の檻 待ち伏せ 馬六 おかつ 8月号 最近出牢した三人が次々に襲われたと言う。三人には繋がりがなさそう。次に出牢する馬六の身が心配である。犯人の手ががりは全く無い。馬六は牢を出る。下っ引が付いていたが、やはり襲われる。馬六の娘が嫁いでいる多田屋の押し込み強盗に関わる話で、犯人の目的は馬六にあり前の三人はごまかすための事件。
人間の檻 影の男 喜八 甚助 10月号 真犯人が自分から、今捕まっている男は無実だと言いふらす。そのようにすれば自分が捕まる可能性が高くなるのに。そこに仕組まれた犯人の巧妙な罠。女と金の両方を一人占めにしようとする男の話。犯人でもないのに捕まった甚助の訳がやや不明。
人間の檻 女の部屋 新助 おむら 83年1月号 大黒屋の女主人が同業者に犯されそうになっている場に居合わせ、はずみで殺してしまったが、死罪を免れ島送りが決まった新助。登は大黒屋の娘の病気で往診した時、百両の金を同業者から借りたらしい話を耳に挟む。結局仕入の為の百両を体で借りたことから起きた偶発的な事件で、おかみの犯罪とは言い難いが・・。大阪への遊学と引き換えに、登とおちえの縁談が纏まる。
人間の檻 別れゆく季節 兼吉 おあき 83年2月
20周年記念特別号
本シリーズ最後の話。以前の作品『奈落のおあき』の一件に絡む話。黒雲の銀次の仲間の兼吉が牢を出る前日、俺が出牢したら気をつけろ、と登を脅す。おあきは豆腐屋に嫁に行っていた。そのおあきを預かったと言う手紙が来て・・。最後は新谷のたすけを借りて無事完了。退職の届けを出し上方に向かう前前日、おちえと言葉ではない約束をする。これにて目出度く終焉。