海坂藩の雑感1に引続いて
登場するユニークな名前
川の名前、寺院の名前等が複数の作品に原則として重複して出現しません。藤沢さんは可能な限り、重複をさせないで、ユニークな名前を常に心がけておられたように思えるのですが、如何なものでしょうか?。
こんな下らない分析?をする輩が現れるとは、藤沢さんも思っていらっしゃらなかったかも知れませんが・・
川で言えば、ただ一つ『馬洗川』が玄鳥、闇討ちの2作品に登場するのみです。海坂藩作品と勝手に決めた△の作品は、結論として、川の名前が全て異なります。
道場名では80以上の道場が登場しますが、重複している名前は11です。やはり、かなりユニーク性に富んでいます。(岡安家の犬、静かな木等晩年の作品が比較的重複しています・・)
寺院名では50ほどの寺院が登場しますが、この内3つの名前のみが重複して登場します。(円徳寺、般若寺、鳳光寺)その他は全て1作品のみにしか使われていません。
従って五間川以外の川の作品は、海坂藩作品とはすべきではないのかもしれません。(読者の心に存在する地域、場所なのかも・・・・)
勝手な推測をすれば、全てユニークな名前にしようとしたが、たまたま重複したのかもしれません。(氏を冒涜するつもりは全くありません・・コンピュータ等の卑怯な飛道具を使って整理したものですから、ごめんなさい)そんな事を考えると、△印で勝手に海坂藩作品と決め付けてしまいましたが、 やはり違うのではないか、の思いが益々強くなります。(残日禄も海坂藩作品ではなくなりますが・・)如何なものでしょうか?
町名は200程度登場しますが、複数の作品に現れる町名が58あります。最も多く登場する名前は、染川町、代官町、鷹匠町 の3つで、各々が12の作品に登場します。海坂藩という場所を舞台にすれば、町名が重複するのは当然です。多分、鶴岡の古地図などを参考にしながらであろうと思われますが、どのようなお考えで町名を決めておられたのか、ここからは推測できませんでした。同じ町名であっても町のその特徴は同じとは限りません。かなり異なります。それにしても1作品のみに登場する町名が140もあるとは驚きです。この町名は主として△の作品に多い傾向です。
尚、用心棒シリーズは、舞台の大半が江戸であり、国元(東北の小藩)で登場する川や寺院などのみを整理対象としています。道場や流派に関しては、江戸に現われた刺客など国元の藩士の流派や道場は入れた積りですが、漏れがあるかもしれません。それにしてもよくぞ多くの名前を考えられたものです。しかもそれらしい文字を駆使して、実に存在感のある名前を・・。尚剣道の流派名はエッセーにも書いてありましたが、全て実在した流派で、架空の流派は一切無いとの事、知識、調査力、これも驚きです。
又『橋、悪徳商人???・屋号』に関しても調べてみましたが、意外に数が少なくやめました。この辺りは江戸市井物作品とかなり趣が異なります。
海坂藩の地図
海坂藩の地図作りが可能な作品は、長編物が前提になりますが、『蝉しぐれ』をはじめとして、 『風の果て』、『三屋清左衛門残日録』、『秘太刀馬の骨』等がありますが、詳細に検討してみると、それぞれ趣が異なっています。(当たり前ですね)
井上ひさし氏が指摘されている通り、『蝉しぐれ』から海坂藩の地図を作ろうとしますと、いくつかの矛盾点があります。氏を含め、皆さんもそれはそれとしてご理解されていることですが・・。P144以降に書かれている「金山橋」は千鳥橋の下流とあるがこの表現は矛盾すると思われるし、個人的には数箇所度納得できない記述があります。(能力の問題かも)
一応四つの作品の情報から地図書きに挑戦してみましたが、めちゃくちゃになってしまい、まとまりが付かなくなってしまいした。一つの作品でも難しいのですから、四つを参考にするとめちゃくちゃになるのは当たり前ですね。
最初は矛盾点の解決になればなどと思って始めたのですが、川の名前も異なり、町名は同じでも、その町の存在意味が全く異なるケースがあり、無駄なことでした。考えてみれば当たり前のことで、馬鹿げたことをしたと反省しています。
結論として、地図を書くとすれば『蝉しぐれ』にみる海坂藩の地図の如く、作品名を付けて、限定した地図にすることが正しいようです。尚、明らかに海坂藩作品の長編物で、地図を書くことが可能な情報を有している作品は、 『蝉しぐれ』、『秘太刀馬の骨』 に限定されます。『風の果て』、『三屋清左衛門残日録』 は五間川が登場しませし、その他の作品では情報が少なすぎます。
結局矛盾点を解決できず、又多くの町名を根拠のある場所に特定できなかったので中止しました。その時に整理した地図作りに関係すると思われる記述箇所は約100箇所超。
全文を調査するのは大変ですから、これから地図作りに挑戦される方は『蝉しぐれ』の地図情報として、掲載をしておきますので参考にして下さい。
海坂藩を鶴岡市に特定してしまうことに抵抗のあるファンもいらっしゃると思いますが(私も多少抵抗あり・・但、△印以外に関しては抵抗なし)、藤沢さんのご出身地と言うことを尊重し、海坂藩の地図とは異なりますが、 『藤沢周平ゆかりの地図』(藤沢周平ゆかりの地図刊行会 発行)を、より一層充実して頂くことも一つの楽しみです。現在はかなり改定され充実しています。感謝です。
海坂藩の食べ物
海坂藩作品(藤沢周平作品)には郷土の食べ物を中心に、多くの食べ物が出てくると一般的に言われておりますが、たーさんとしては、他の作家の作品に比してそれほど多く登場しているとは思っておりません。用心棒シリーズ、三屋清左衛門残実録、や風の果てでは、確かに多くの食べ物が登場しますが、作品全体を眺めればむしろ淡白な書き方ではないか・・・そんな感じ方をしています。この点は藤沢作品ファンとは見解を異にする立場です。(^_^;)