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文庫本初つばめ』の出版

 2011年12月、珍しい文庫本が出版された。実業之日本社文庫から編纂・出版された「初つばめ」がそれである。
誠に失礼ながら、実業之日本社文庫ってあったの?と思って少し調べてみたら、2010年10月にスタート、2011年12月現在で都合9回に亘って出版されていた。既に50冊は超えているようである。

 それはさておき、どのような作品が編纂されているのかと、かなりの興味を持ってページをめくってみた。まさか新作があるはずが無いと思いつつ・・・。以下に編纂された10作品を表に纏めたが、当然のことながら全て既刊の作品であった。

作品名 初出 既刊文庫本
驟り雨 小説宝石 新潮文庫  驟り雨
遅いしあわせ 週刊小説 同上
運の尽き 問題小説 同上
泣かない女 問題小説 同上
踊る手 週刊小説 文春文庫  夜消える
消息 週刊小説 同上
初つばめ 週刊小説 同上
夜の道 週刊小説 新潮文庫  時雨みち
おさんが呼ぶ 週刊小説 同上
時雨みち 別冊文藝春秋 同上
  特別読物として 江戸の豆知識1〜4 江戸の刑罰、    米と江戸煩い、
表店・裏店、    商人・大店
  初つばめ 江戸町歩きマップ 大川を中心に日本橋・深川の近辺地図・スポット
  解説 松平定知 元NHKアナウンサー

 新潮文庫、文春文庫で既に編纂出版されている作品群である。いかなる意味合いのある文庫なのか・・・奥付を読んでなるほどと思った。元NHKアナウンサー「松平定知氏」の『藤沢周平をよむ2』で紹介された作品10編を収録したオリジナル短編集です・・・とある。(チャンネル銀河で放送)

 私ことたーさんも、鶴岡の記念館で松平氏の朗読「蝉しぐれ」を拝聴した一人であり、松平氏の藤沢作品好きは、夙に有名であることは十分に承知している、あぁ病膏肓遂にここ迄来たか・・・と、うらやましく思いいたく納得をしている次第である。
尤も氏の発案か、実業之日本社の企画化か定かではないが、既刊書として版権を持っている新潮文庫、文春文庫サイドが認めたのであろう。その寛容な態度は敬服に値するのではないか、通常は考えにくい。(よく見ると著作権継承者が監修しているので影響もある?)

 初出に週刊小説の作品が多い(6作品)。定かではないがこの雑誌は確か実業之日本社であったように記憶している。冒頭に書いたが文庫の創設に際して、可能ならば藤沢作品を取り上げたいと考え、松平氏の思いが相俟って編纂にこぎつけたのかも知れない。(勝手な推測)唯、この様な文庫本が頻繁に出版されるようになると、勝手にデータベース管理をしている私としては個人的には大変だ!。(笑)

 松平アナウンサーの解説は素晴らしい。藤沢作品との出会いなどは既に承知している方が多いと思うが、作品に対する姿勢が、師と仰ぐ方の教えと共に語られる。原作と映像の違いには色々な解釈があるが、「作者の思いを忖度する」このことこそが肝要であることを再認識させる解説である。カラヤンや小澤征爾も素晴らしいが、ベートーベンが一番偉い。この考えに納得しあらためてそう思う。¥650、高くは無いので購入しますか。本作品は藤沢周平全集3巻にすべて入ってます。唯、プロのアナウンサーが選択をした作品ですから、朗読によって味わいがより一層深まる作品群であることは間違いないでしょう。CDが発売されているかどうかは私の関知するところではありません。

 「橋ものがたり」この単行本は実業之日本社である。文庫が出るのかな?新潮社がどう出るか。

2011年12月記述  

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