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幻の短編15作品の概要


 以下の表は発表年月順です。雑誌に掲載される場合、どのくらい前に書くのか分かりません。おそらく掲載の数ヶ月前に書いているのでしょう。1964年1月〜2月が空白となっていますが、それより数ヶ月前に起きたことが思い起こされ、胸に迫るものがあります。濃い色の作品がオール讀物に掲載された作品です。(2006年8月号迄)

 オール讀物2006年8月号が発売されました。当初発表された計画通り、本号迄で7作品が掲載されました。掲載は本号で終了。未掲載の作品は単行本として刊行されるとのことです。

 2006年11月文藝春秋から『藤沢周平 未刊行初期短編』編纂・発売されました。著作権に留意しながら、14作品の全体像を掲載します。(2006年11月追記)

 更にオール讀物2008年4月号に、新発見の『浮世絵師』が掲載されました。これに関する概要を追記します。

掲載年月日

作品題名 掲載雑誌

挿 絵

ジャンル

一     言

1962/11 暗闘風の陣 読切劇場 関根孝一郎 武家 隠れキリシタンの分裂と、埋蔵金の奪い合い幕府隠密でお庭番の如月伊十郎の活躍。
1963/03 如月伊十郎 読切劇場 滝川 共 武家 隠れキリシタンの逃亡資金稼ぎ。幕府隠密で北町奉行与力の伊十郎の果たす役目。
1963/04 木地師宗吉 読切劇場 関根孝一郎 庄内市井 こけし職人宗吉の苦悩、味わいは「雪明り」こけしに関しては「夜が軋む」が思い出される。 
1963/07 霧の壁 読切劇場 滝川 共 江戸市井 嫁いだがすぐに戻ってきたお文、終章は「こぬか雨」を思い出すような、全体として『橋ものがたり』の雰囲気が漂う作品。
1963/08 老彫刻師の死 読切劇場 横山十郎 エジプト
市井?
衰え行く老職人の哀れ。何と舞台がエジプトとは、ちょっと驚き。名作「暝い海」を思わせる作品。
1963/09 木曾の旅人 読切劇場 関根孝一郎 市井 老いて故郷の木曾に帰った喜之助、そこには我が娘が居るはず。「帰郷」の原型の感じの作品。 
1963/10 残照十五里ヶ原 読切劇場 横山十郎 歴史 戦国初期の庄内の統治をめぐる興亡。史実に基づいた力作。「密謀」の奥行きの深さを感じる作品。
1963/10 忍者失格 忍者読切小説 杉下一喜 武家 庄内地方の興亡と忍者の世界。「残照十五里ヶ原」の少し前の時代を扱った作品。
「密謀」の草の人々の原型?。
1963/11 空蝉の女 読切劇場 杉下一喜 江戸市井 親方の妻お幸と、大工職人信次の不倫。そこに出現した施主のお嬢さん。お幸の果ては・・。
1963/12 佐賀屋喜七 読切劇場 杉下一喜 江戸市井 悪妻と、本家筋の出戻り女お品のある一言が男を・・。これも藤沢流江戸市井作品の或種の原型であろう。
1964/01 浮世絵師 忍者読切小説 大野俊明 歴史創作 晩年の葛飾北斎の苦悩を描いた歴史創作作品。倅の女房との思わぬ出来事から始まる苦悩や若き日の広重に対する憎しみと畏れを描く。『暝い海』の原型となった作品
1964/03 待っている 読切劇場 横山十郎 江戸市井 島帰りの徳次、思いもしなかったお美津を女房にしたが、「割れた月」の原型。著者はこのモチーフを後々まで大切にしたのでは。
1964/04 上意討 読切劇場 今野英子 歴史 「長門守の陰謀」の前編に相当する作品。歴史小説と時代小説の中間?。後の作品「ただ一撃」に登場人物が反映か。海坂藩作品の源流?
1964/06 ひでこ節 忍者小説集 三谷一馬 庄内市井 新しい人形を模索する長次郎
「川霧」をふっと思い出す。
1964/08 無用の隠密 忍者小説集 中込 漢 武家 庄内に入った公儀隠密の狭直四郎、目的の半分は果たすが・・・。「帰還せず」と少し異なるが。

 結果として庄内を舞台にした作品が7作品。簡単に整理しますと以下のようになります。

作品の舞台 ジャンル 作品数
庄内 歴史
  武家
  市井
江戸 武家
  歴史創作
  市井
その他 市井

 如月伊十郎が主人公の作品が冒頭に二作品ありますが、シリーズ物として、あと数作品存在しているような気もしていますが、期待のし過ぎでしょうか。笠戸孫十郎を主人公にした「疑惑」「密告」も二作品で終わっていますからやはりそれは無いですかね。単行本の解説で阿部達二氏は「姉妹編」としています。なるほどと納得しています。

ご意見その他は  たーさん  迄