ちょっとユニークな作品
江戸市井作品の整理基準で述べておりますが、225作品をここでは123作品に集約しています。その大半は多くの町名やその他で彩られています。特に町・地域名、商い、屋号はほとんどの作品で登場していますが、なぜか登場しない作品が少しだけあります。ちょっと変わったユニークな作品を挙げてみました。
作 品 名 | 単行本名 | 特 徴 |
おさんが呼ぶ | 時雨みち | 町名無し 商いはかなり登場するが、江戸と言う表現が一度出るだけの作品 |
踊る手 | 夜消える | 町名無し 新石場が登場するので舞台は江戸ではあると思えるが |
夜消える | 夜消える | 町名無し 商いは登場するが、舞台が江戸である確証のない作品 |
梅雨の傘 | 日暮れ竹河岸 | 町名無し 商い・屋号は登場するが、舞台が江戸である確証のない作品 |
三日の景色 | 日暮れ竹河岸 | 町名・屋号無し 商いで油屋のみ登場、舞台が江戸の確証無しの作品 |
十三夜 | 日暮れ竹河岸 | 屋号・川その他の登場しない殺風景な作品、江戸が舞台ではあるが |
晩夏の光 | 日暮れ竹河岸 | 屋号・川その他の登場しない殺風景な作品、江戸が舞台ではあるが |
つばめ | 日暮れ竹河岸 | 川・掘割その他が出てこない作品 |
昔の仲間 | 時雨みち | 川・掘割その他が出てこない作品 |
飛べ、佐五郎 | 時雨みち | 川・掘割その他が出てこない作品 |
失踪 | 龍を見た男 | 川・掘割その他が出てこない作品 |
逃走 | 龍を見た男 | 屋号の登場しない作品 |
入墨 | 闇の梯子 | 屋号の登場しない作品 |
小さな橋で | 橋ものがたり | 作品名に橋が付いていて橋が登場しない作品 |
江戸が舞台である確証のない作品も含め、ちょっと変わった作品をピックアップしましたが、単行本名から考えるとある一つの傾向があるように思えます。すなわち特定の単行本作品に限定できるようです。『日暮れ竹河岸』に編纂されている作品の、江戸おんな絵姿十二景色は特に軽いタッチの小品が多いので、それなりに納得できます。又『時雨みち』に編纂されている各作品は、全体的に淡白な表現の作品です。
主人公の住む町が不明な作品
これだけ町名が書かれているのであるから、作品に登場する『主人公』が住んでいる町の名前は当然判明するであろうと考えていました。いささか邪道な読み方ですがそんな観点から読んでみますと、これが中々骨の折れる作業でした。(主人公はたーさんの独断と偏見で決めています) (-_-;)
作品の最初の方で判明する場合も結構ありますが、かなり読み進まないと町名が登場しない作品も結構多いように思いました。そして最後まで読んでもどこに住んでいるのか判らない作品があります。例えば『三年程前からxx町の裏だなに住んでいたが、最近この長屋に越してきた。』等の表現があり、この長屋が何という町にあるのか最後まで書かれていない作品があります。更に間接的な表現で町名を書いてある場合もあり、やっと判明した作品もかなりありました。読み落としの可能性もありますので、完璧ではない可能性がありますが、住まいの在る場所が分からない作品を表に纏めてみました。全体としては1割程度の作品が不明です。
NO | 作品名 | 単行本名 | 主人公 | 仕事 | 長屋名 |
1 | 意気地なし | 時雨のあと | 伊作 | 蒔絵師 | |
2 | 秘密 | 由蔵 | 筆屋(鶴見屋)の隠居 | ||
3 | おさんが呼ぶ | おさん | 紙問屋(伊豆屋)下働き | 作品自体に町名無し | |
4 | 盗み喰い | 政太 | 根付師 | ||
5 | おとくの神 | 霜の朝 | おとく | 鍛冶職人の女房、日雇い女 | |
6 | 怠け者 | 弥平太 | 下男奉公 | ||
7 | 小さな橋で | 橋ものがたり | 広次 | 子供 | 半助店 |
8 | うしろ姿 | 驟り雨 | 六助 | 左官 | |
9 | ちきしょう! | おしゅん | 夜鷹 | ||
10 | 人殺し | 繁太 | 錺職人 | 日斜め長屋 | |
11 | 朝顔 | 日暮れ竹河岸 | おうの | 畳表問屋(伊原屋)の妻 | |
12 | うぐいす | おすぎ | 大工の女房 | ||
13 | 大はし夕立少女 | さよ | お店奉公人 | ||
14 | 枯野 | おりせ | 紙問屋(山倉屋)の女主 | ||
15 | 十三夜 | お才 | 大工の女房 | ||
16 | つばめ | おきち | 水茶屋勤め | ||
17 | 梅雨の傘 | おちか | 女郎 | 作品自体に町名無し | |
18 | 晩夏の光 | おせい | 料理屋勤め | ||
19 | 三日の景色 | おくに | 紙問屋(玉木屋)の女房 | 作品自体に町名無し | |
20 | 夜の雪 | おしづ | 縫物賃仕事 | ||
21 | 踊る手 | 夜消える | 信次 | 大工の子供 | |
22 | 遠ざかる声 | 喜左衛門 | 太物屋(新海屋) | 作品自体に町名無し | |
23 | 夜消える | おのぶ | 雪駄問屋(藤代屋)勤め | ||
24 | 冬の足音 | お市 | 錺職人の娘 | 作品自体に町名無し |
作品自体に町名がない場合は当然ですが、24作品に主人公の住む町名がないことにいささか驚きました。唯、傾向としては『ちょっとユニークな作品』と共通性があるようです。長屋名があるのに町名がないのもちょっと愉快です。この辺の真意は全くわかりません。もし、何方か主人公の住まいの町名を見つけられたらご連絡をいただければ有難いです。以上雑感3でした。
江戸市井作品の雑感4 へ続く???