トップに戻る

特殊な単行本

没後の特殊な単行本

 藤沢周平没後、既に編纂・出版されている作品を別の観点から編纂された単行本が発行されています。

2007年に文藝春秋より、海坂藩を舞台とした作品として、或一つの基準で選出・編纂された単行本が出版されています。海坂藩短編作品が21作品掲載されています。 「染川町」(歓楽街)が出てくれば海坂藩作品としているようですが・・・個人的には多少の違和感を覚えています。

  2007年(平成19年) 文藝春秋   海坂藩大全(上・下)

 2010年4月鶴岡市立藤沢周平記念館の開館を記念して、下記の単行本が出版されました。(2010/4/25)『小説の周辺』『周平独言』『ふるさとへ廻る六部は』『半生の記』『帰省』に編纂されているエッセーから、藤沢周平の故郷を想う作品を集め、一冊の本にしたものです。分散されている作品をこのようにして読むと、又別の感慨が浮かんできます。

 六部構成で都合46のエッセーが編纂されています。(巻末に詩二編があるので計48編)阿部達二氏の解題「悲しみの色」も楽しみな読物です。(2010/4/28 追記

  2010年(平成22年)  文藝春秋   『乳のごとき故郷

 

 その他ここでは既刊本と重複して出版されている特殊な本に関して、承知している範囲で掲載をします

単行本潮田伝五郎置文

 滋賀県にお住まいの衣斐○弘さんという藤沢作品ファンの方から、『「たーさんの部屋」の単行本刊行リストには1985年8月東京文藝社から出版されている「潮田伝五郎置文」が載っていません。またその旨の注意書きもありません。たーさんのひまな時で結構ですので、お教え下さい』。というご意見がありました。

 私もその存在を全く知りませんでした。あらためて講談社文庫の巻末に掲載されている「年譜」を精査してみると確かに存在している様子。更に朝日週刊ビジュアル「藤沢周平の世界全30冊」の第1回分の綴じ込み別冊の「藤沢周平作品単行本全装幀」は全ての単行本の表紙が掲載されていますが、17ページに表紙写真も掲載されていました。(衣斐○弘さんはここから見つけられたようです)

 早速調査をしてみましたが手掛かりがなかなか無く、最終的には『とにかく藤沢作品に詳しい方』のご協力を頂きその存在が明らかとなりました。確かに存在しています。この単行本は改版を重ね、結果的に以下の3冊が存在しています。そして3冊ともそれぞれ別の美しい表紙です。是非手元に置いておきたい本ですが、現在は絶版と思われます。古本屋を漁るしかないようです。

出版社 発行年月日 価格
東京文藝社 初版 1985年10月 ¥1000
東京文藝社 新装版 1989年08月 ¥1000
光風社出版 新装版 1991年08月 ¥1100

編纂されている作品

作品名 初出 既存単行本名 出版社 出版年
潮田伝五郎置文 小説現代 冤罪 青樹社 76年
鱗雲 週刊小説 時雨のあと 立風書房 76年
拐し 問題小説 神隠し 青樹社 79年
泣かない女 問題小説 驟り雨 青樹社 80年
山桜 小説宝石 時雨みち 青樹社 81年
裏切り 小説現代 夜の橋 中央公論 81年
暗い鏡 小説現代 夜の橋 中央公論 81年
帰って来た女 小説宝石 龍を見た男 青樹社 83年
二天の窟 小説現代 決闘の辻 講談社 85年

 上表のように合計9作品が編纂されていますが、かなり以前に単行本として刊行された作品もあれば、『二天の窟』のように直前に単行本として刊行された作品も含まれています。このように既に単行本として刊行されている作品の中から、あらためて選択し、新しい単行本として東京文藝社から出版された理由は分かりません。又出版社が91年8月に光風社出版に替わった理由も定かではありません。(それなりの推測は出来ますが、確実な裏付けがとれませんでした)以上が「潮田伝五郎置文」に関する情報です。

 尚朝日週刊ビジュアルに掲載されている表紙(潮田伝五郎置文)の写真は、正確には3冊目の、1991年8月の光風社出版のものと思われます。したがって説明文は誤植と思われます。(細かいことをごめんなさい)出来ればこのホームページで、3冊の表紙を掲載すべきですが、著作権上の問題を考慮して掲載はいたしません。ご理解ください。(本の表紙を画像で無断で掲載することは、著作権違反と私は考えています)

その他特殊な単行本

 又、講談社文庫(決闘の辻等)に編纂されている著者自筆の年譜を細かく精査してみると、更に下記の単行本??が存在していると思われますが、掲載作品などの詳細は解りません。(調査もしていません)

1985年 (昭和60年) 埼玉福祉会 『暗殺の年輪』 『暝い海』の二冊

 1985年は以上のように重複出版された本が3冊存在する珍しい年です。勿論その訳などわかるはずもありません。

 又上記のケースとはやや異なりますが、単行本で刊行されている作品からあらたに選択され、出版されている本に「藤沢周平短編傑作選」として、

1981年(昭和56年)文藝春秋 『臍曲がり新左』 『父と呼べ』 『冬の潮』 『又蔵の火

の四冊が存在することはご存知の方が多いと思われます。

 

ご意見・ご感想は  たーさん  まで