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藤沢周平作品内容7

よ 〜 わ・単行本無し
単行本書籍名 作 品 名 主人公 脇役 初出詳細 内         容
用心棒日月抄 犬を飼う女 おとよ 由亀 9月号 小説新潮76年9月号から78年6月号に連載された作品。藤沢周平作品に大きな変化が出てきた頃の傑作で用心棒日月抄の第一作。家老の大富丹後の藩主毒殺と言う陰謀を知ったため、やむを得ず許婚の父を斬り脱藩、江戸で用心棒家業をする青江又八郎。生類哀れみの令や、赤穂浪士の話を縦糸に、幾つかの事件を短編とする形式で、僚友細谷と共に生きる用心棒生活を描く。最後は国元の状況が変わり晴れて帰国する。その後このシリーズで活躍する佐知が、帰国するシーンに初めて現れる。帰国後の由亀との生活描写、藩の待遇等から一見完結したと思われるが・・第二作『孤剣』に引き継がれ次第に縦糸が変化してゆく。第一作は用心棒の仕事が話の中心であり、10の短編からなっており、それぞれ一つの作品として書かれているので各々を一つの作品として整理した。その第一話。江戸に来た経緯、口入れ屋の相模屋、細谷との出会いを伝え現状を理解させる事が中心。「まる」と言う犬が殺されるかもしれないので見張ってほしいと言う仕事。恋仲だった男の犯行。国元の家老大富が遣わしたと思われる刺客が現れるがこれを斬る。
用心棒日月抄 娘が消えた およう 喜八 11月号 吉良邸に奉公に上がる娘「およう」は、お稽古に通っているが、誰かに後をつけられていると言う。用心棒を引き受けるが、国元からの刺客に襲われ、その間におようは居なくなってしまう。おようには好きな男「喜八」がおり、二人は逢い引きをしている時、人殺しをした犯人をたまたま見てしまった為付け回されていた。 斬り合いの末助け最後は二人は一緒になる。おようは既に喜八の子供を身ごもっていたという話が決め手になって・・がしかし。
用心棒日月抄 梶川の姪 千加 石黒滋之丞 77年1月号 側用人の柳沢保明からの依頼で、旗本梶川の護衛の仕事が来る。浅野の浪人から身を守る仕事である。実態としては、姪の婚約破棄に絡む事件であり、赤穂浪士を唆した陰謀。細谷がこれを討つ。女が垣間見せた底に潜む怖さが印象的。
用心棒日月抄 夜鷹斬り おさき 鳴海市之進 5月号 仕事にアブレ晩飯を手当て代わりに(多少の余録もあったが)毎日男に付け回されている夜鷹の護衛をする。付け回される理由は全く心当たりが無い。ちょっとした隙に女は殺されてしまう。赤穂浪士の大石の東下りに絡めた話で、上杉家の男が殺人計画をおさきに聞かれた為に殺害した事が分かる。勿論又八郎がこれを斬る。
用心棒日月抄 夜の老中 小笠原佐渡之守 藤尾 7月号 細谷も怪我をした後がまの用心棒を引き受ける。相手はかなりの遣手。雇い主の行動は秘密裏に行われる。奥方は主の浮気であろうと想像し、又八郎に別の追加依頼をする。主の行動は赤穂浪士にまつわる幕府側の動向調査であり、又八郎が腕の立つ何者かを斬る。しかし奥方の感も当たっている。国元の由亀の動向が気になる。
用心棒日月抄 内儀の腕 おちせ 塚原左内 11月号 備前屋の女房の護衛が今回の仕事。赤穂浅野藩出入りの商人で、赤穂浪士に資金面で援助しておりその役目を女房がはたしていた事が判明。吉良側からねらわれていた。同じく雇われたもう一人の用心棒が実は吉良方の人間であり、最後これを討つ。女房の前歴等、中々手の込んだ話。題名の意味は最後に見えた女房の刺青。由亀は嫁に行っていない事が分かる。
用心棒日月抄 代稽古 長江長左衛門 おりん 78年1月号 掘内流道場の師範代を引き受ける。手間賃は少ないがまあまあの仕事。この話は、用心棒稼業に関係なく、掘内道場を中心とした赤穂浪士の活動ぶりを知り、仇討ちが次第に現実味を帯びてきた状況を伝える。おりんと言う女が登場。吉良方らしい。神崎与五郎、堀部安兵衛、吉田忠左衛門等の有名人物が多数登場。国元からの刺客を一人倒す。
用心棒日月抄 内蔵助の宿 垣見五郎兵衛 おりん 3月号 口入れ屋に向かう途中おりんと会い、その晩はおりんのところに泊まる。今度の仕事は、川崎宿の平間村に訴訟事で大金を持参している人物の用心棒。勿論大石内蔵助。大石の立場で忠臣蔵の一連の流れを語らせる。そしてやはり襲撃がある。三人を相手にした戦いの描写は抜群のうまさ。おりんが襲撃の一人として現れるが又八郎に救われる。おりんは新しい仕事で上方に行くと言う。
用心棒日月抄 吉良邸の前日 黒木左門    5月号 口入れ屋相模屋の帰り国元とからの刺客曽部を辛くも斬る。国元の変化が気にかかる。腹が減ってはどうにもならぬと、気が進まぬが吉良邸の用心棒を細谷と引き受ける。厳しい制約はあるものの客人のごとき日を過ごすが、11日江戸屋敷の土屋が手紙を持って現れ国元の話、赤穂討ち入りの計画を知り、芝居を打って13日に吉良邸を退散する。14日未明赤穂浪士の討ち入り。
用心棒日月抄 最後の用心棒 大富静馬 由亀 6月号 国元の要請で帰国するが途中女の刺客に襲われる。名前は佐知。自分の短剣で腿を刺してしまうが、又八郎に助けられる。大富静馬が数回現れるが勝負無し。藩では殿殺害の事件が明白になり間宮派の勝利、大富は上意討ちになる。由亀が待っており結ばれる。一応加増されて平和が戻るように思えるが・・しかしこの話は更に『孤剣』へと続く。
夜消える 夜消える おのぶ 兼七 週刊小説
83/1/14日号
以下の7作品は、夜消えると題して珍しく文庫が先に出版された本。1982年から1990年迄と、比較的長い間に発表された作品(主として週刊小説)を集録した本であるが、同じ雰囲気が全体に漂っている。珍しく江戸の下町が細かく描かれていない代わりに、人の心がきめ細かく表現されている。
酒飲みでどうしようもない亭主。娘の縁談に絡んで、娘の一言が気に入らず家を出たまま帰らない。どうしようもない夫であっても何故か気がもめる妻、そして夫婦の心境。
夜消える にがい再会 新之助 おこま 週刊小説
86/1/10日号
叔父夫婦に育てられたおこま。夫婦の借金のため体を売る身になるが、しばらくの後、生まれた町に帰ってくる。それを知った幼友達の新之助が遊び心で近づくが・・・。人の心が試される話。
夜消える 永代橋 菊蔵 おみつ 週刊小説
87/2/20日号
別れた亭主と五年ぶりに再会。別れた理由が女ではなく、博打の事であったと初めて聞いて、少し自分の気持ちに整理がついて、おみつの心の中に僅かながら明かりが灯る。
夜消える 踊る手 信次    週刊小説
88/2/19日号
年寄り一人を残し夜逃げした一家。残されたおばあさんに近所の人人が面倒を見るが、老婆は更にかたくなになる。結局子供の信次がおばあさんの心を開き、大人以上の仕事をする。
夜消える 消息 おしな 作次郎 週刊小説
89/2/17日号
突然姿を消した夫の消息を五年ぶりに聞いて、あちらこちらを探し、いなくなった本当の訳を初めて知る。奉公先の借金返済に絡んで、やむを得ず犯人になっていた事が判明。新しい生活が始まる。『永代橋』とイメージが重なるような作品。
夜消える 初つばめ なみ 友吉 週刊小説
90/3/30日号
たった二人の姉弟、姉は体を売ってまでして弟を育てたが、大きくなった弟は出世。良家のお嬢さんと婚約。挨拶に来た場面での姉の素直になれない切ない心境表現は素晴らしい。佳作。
夜消える 遠ざかる声 喜左衛門 はつ 小説宝石
90年10月号
無くなった女房(幽霊はつ)との会話が中心。再婚話が都度あるが必ず破談になる。無くなった女房の亡霊がいつも邪魔をする。おもんと言う人の場合もそうであるが、今回は結果として『はつ』に助けられる。そして幸せはすぐ近くにあるじゃないかと教えられ・・・。ユーモア作品の類か。この作品だけ少し雰囲気が異なるような。
夜の橋 鬼気 細谷久太夫    小説宝石
75年10月号
若き剣士三人が、細谷久太夫の剣豪の噂は本当か、疑問に思い悪戯を仕掛けるが、そのすごさに圧倒される話。まさに鬼気迫る迫力。細谷と言う名前がなんとなく懐かしく嬉しい。
夜の橋 夜の橋 民次 おきく 週刊小説
76/1/30日号
自分の甲斐性の無さから別れた元の女房が、再婚話の相談に来る。俺にはもはや関係ないといいつつ、調べてみればこれがとんでもない悪人。結局最後は自分もやくざの世界から足を洗うことが出来て元のさやに収まる。単行本表題作。
夜の橋 裏切り 幸吉 おまち 小説現代
77年6月号
女房のおつやが帰ってこず、挙げ句に水茶屋で殺された。犯人は幸吉がいつも面倒を看ていた長次郎。おつやの言う『あの人は嫌い』の言葉が、実は反対であったと言うことを幸吉が初めて分かる。女心はわからない。
夜の橋 一夢の敗北 吉田次左衛門 細井平洲 小説新潮
77年10月号
米沢藩の歴史とその中の剣豪の一人を扱った作品。剣豪、吉田次左衛門一夢が、儒学者の細井平洲の自然体の迫力にどうすることも出来なかったと言う話。武術の話が新鮮である。後の上杉家の一連の小説のはしり。
夜の橋 冬の足音 お市 時次郎 別冊小説宝石
77年冬季号
持ち込まれる縁談話に対して、その都度断ってきたお市の心には昔懐かしい時次郎がずっと生きていた。久しぶりに会うことが出来たが、相手は子持ちとなっており自分の娘時代はこれで終わったと思った。春はやがて来るだろう。
夜の橋 梅薫る 志津 江口欽之助 問題小説
78年4月号
保科家に嫁いだが何かにつけて実家へ帰ってくる志津の本当の理由は、何故江口との縁談が壊れたかがどうしても理解できないため。志津が大胆な行動に出たのを機会に父親がその実態を話す。剣の修行で、ふとしたミスで不能者となった江口の思いやりの心を静かに話す。藤沢文学の味の良さ。文章が特に美しい。
夜の橋 孫十の逆襲 孫十    小説現代
78年5月号
関ケ原の生き残りの老兵が、老体に鞭打って野伏りと戦う話。関ヶ原の残兵と言っても実は逃げ回っていただけが実態であり、その事を誰も知らないと思っていたが娘までが知っていた。そのことに奮起して村を救う。
夜の橋 泣くな、けい 相良波十郎 けい 小説現代
78年8月号
死んだ女房の不貞に絡んで、藩の重要な刀を紛失した責任を果たすため、奉公人のけいに全幅の信頼をし、彼女の努力で短刀を取り戻すまでを描く。男としてはだらしない話?。冒頭に、けいとの過ちのシーンがあるが、けいの気性の描き方が特に良い。たーさんの好きな作品のひとつ
夜の橋 暗い鏡 政五郎 おきみ 小説現代
78年11月号
姪のおきみのことは気にしていながら、面倒を看てやる暇も無かった、そのおきみが殺されたと言う知らせが入る。調べてみると、体を売るような女になっていたことが解かる。紐のような男を見つけ出して鬱憤を晴らすが、しかし空しさと余計なことをしたのかもしれないと言う気持ちが交錯する。
よろずや平四郎活人剣 辻斬り 北見十蔵 明石半太夫 10月号 迄オール讀物80年10月号より82年11月号に連載。上中下三冊の超長編(文庫本は上下の二冊)。千石の旗本の末子で実質は妾腹の子の冷飯ぐいの神名平四郎。道場の共同経営の話にだまされ五両の金を失い、仕方なくよろず相談承りの看板を掲げ、生活を維持する。この小説の縦糸は、老中堀田、目付である兄神名監物と、ライバル鳥居耀蔵との確執や水野忠邦の天保の改革の時世を描き、更に消えてしまった許婚の早苗を探す長編小説形式である。がしかし、横糸によろずや稼業の話が短編として存在するため、それぞれを一つの作品として整理した。一つ一つは単純な話で、常にその話の中に縦糸の進展がある。用心棒日月抄と趣の同じような気もするが、縦糸が異なる上に、より庶民的で別の味わいがある。24話ありかなりの長編である。話が進む中で季節の移ろいが巧みに挿入される。その第一話。二人の友人と道場の話が流れたいきさつ説明しつつ、兄から頼まれた辻斬りをする旗本を斬る話。
よろずや平四郎活人剣 浮気妻 おこう 枡蔵 11月号 兄の置かれた状況、高野長英の書いた書物等、この話の縦糸を説明しながらふとした事で浮気をした紙屋の女主が、相手の男と手を切りたいと言う話に、商売として初めて成功する簡単な話。
よろずや平四郎活人剣 盗む子供 伊兵衛 竹蔵 12月号 高野長英の書き物を持っていると思われる田島を探索しつつ、寂しい一人の老人に、手癖の悪い子供を世話する話が語られる。同時にかつて許婚であり、お家が取り潰されてその後行方の知れない早苗の探索話も付け加わる。
よろずや平四郎活人剣 逃げる浪人 戸田勘十郎 古沢武左衛門 81年1月号 仇持ちの浪人から仲裁を頼まれ、うまく相手と話が付いたと思いきや、二人は対決し返り討ちにしてしまい結局金に成らない話。田島探索中に、手下二人が鳥居の手によって殺害される。
よろずや平四郎活人剣 亡霊 徳兵衛 枡六 2月号 二十五年前の盗人で今は糸問屋の主から、昔の仲間から千両の金を強請られているので助けてほしいとの依頼。最後は250両で決着する。このあたりから、よろず相談の話が中心となり、話が結構面白くなってくる。
よろずや平四郎活人剣 女難 おきぬ おたか 3月号 亭主と妾を別れさせてほしいと言う依頼があり、その妾も別れる事は簡単に承知する。その方法とは、妾と平四郎がいい仲であるように芝居をする。芝居にだまされ亭主は女と縁を切る。この結果、紙屋のおこう・おきぬの二人から信頼される。
よろずや平四郎活人剣 子攫い 郷右衛門 友次郎 4月号 かなり悪徳な金貸しをしている家の子供が誘拐され相談を受ける。犯人は元、金を借りて挙げ句の果てに潰れてしまった商家の成長した息子。彼の気持ちを察して、それなりに依頼人にも犠牲を払わさせる。五年ぶりに許婚の存在が分かる。一方、探索している田島が鳥居の手に落ちて捕まる。
よろずや平四郎活人剣 娘ごころ おとし 新太郎 5月号 許婚の早苗は20歳も離れた男の妻になっていると言う。それはさて置き、煮豆やの娘が男に捨てられたとのこと。相手は娘が勤めていた店の若旦那で別の縁談がまとまったからだと言う。最後はおとしがこちらから断る。自分も男を見る目が無かったと言う。一方田島の探索に成功し、保護し、書き物も手にする。取敢えず最初の縦糸が解決してしまう。
よろずや平四郎活人剣 離縁のぞみ おとわ    6月号 早苗の嫁ぎ先を見張り、存在を見届ける。このあたりから、一つ一つの短編が中心になってゆく。それはさておき、新しい依頼人が登場する。竹皮問屋のおかみが亭主と別れたいと言う。嫌悪感が募り暴力をふるわれ生傷が絶えないと言う。平四郎は亭主に女遊びをさせるように仕向け、その女と芝居をして別れさせる事に成功するが、おかみには既に一緒に住む男がいた。後味の悪い仕事。
よろずや平四郎活人剣 伝授の剣 日田孫之丞 埴生康之助 8月号 剣の師が一番弟子を差し置いて自分(日田)に秘剣を授けると言う。藩の上司も歓迎する。それに対して一番弟子(埴生)がそうはさせないと邪魔をする。その仲介を引き受けて金で解決したはずが、埴生は金を受け取ったにもかかわらず裏切り、果し合いをする。がしかし、授かった秘剣で討たれる。
よろずや平四郎活人剣 道楽息子 おもん 甚兵衛 9月号 どうしようもない道楽息子に勘当を言い渡したものの、出来れば帰ってきて欲しいので、平四郎が間に立つ。息子の庄次郎には中々よい娘が一緒に生活しており、親も気に入る。息子が仕組んだ押し込み騒ぎ等があるが、最後は手間賃になる。
よろずや平四郎活人剣 一匹狼 おこま 吉次 10月号 旦那に死に別れた妾のおこま。女房に死なれ三人の子供がある幼馴染の吉次が、危ない仕事をしているのを止めさせ、出来れば一緒に住みたいと言う。彼を観察し、最後は危険な仕事から足を洗わせる。
よろずや平四郎活人剣 消えた娘 きえ 文次郎 11月号 おとらと言うばあさんの孫娘がいなくなったので、探して欲しいと言う依頼。どう見ても金を取れそうにないが、仕方なく引き受ける。信夫屋の倅が横恋慕して匿っている事を突き止め孫娘を取り戻す。牢屋に入りたくなければ三十両程を娘にやれと言うが、渋い相手は五両しか出さない。
よろずや平四郎活人剣 嫉妬 くみ 間瀬仲之進 12月号 平四郎は捨てられていた赤ん坊を拾う。悋気の強い妻を持ち子供の無い旗本の夫婦。妻が実家に帰った時女中と関係があり、出来た子供との事。養子に決まっていた男とこの実子との家督相続をめぐるお話。子供を背負っているところを早苗に見られてしまう、ちとまずい。
よろずや平四郎活人剣 過去の男 おあき 喜太郎 82年1月号 許婚の男が最近冷たくなって心配している娘の相談。実は高利貸しによって家を潰された五歳の子供が成長し、親の恨みを晴らしたくて付け回し殺そうとしている事が分かる。話が付いて、最後は高利貸しが詫びを入れるが、それはうわべだけでその帰り道、高利貸に待伏せされ殺されそうになるが、間一髪で間に合う。
よろずや平四郎活人剣 密通 八兵衛 おくま 82年新春特大号 脇役北見の妻の登場を描きながら新事件をさばく。女房に死なれた男がふとした弾みで人妻に手をだし、その亭主から脅しをかけられる。美人局か?。しかし男は女房には内緒だと言うが何故なのか。調べると亭主は酒好きの為不能者である事が分かる。結局丸くおさまるが・・
よろずや平四郎活人剣 家出女房 芳次郎 おきち 4月号 あまりにも頼りない亭主に、愛想を尽かして家出してしまった女房を、元のさやに収めるまでの話。家出の原因は別として、怖い男が存在する。男から女房を取り戻す勇気?。最後は頼りない亭主が男らしくなる。「意気地なし」(時雨のあと)と多少似ているような気がする。
よろずや平四郎活人剣 走る男 清助 およし 5月号 夫婦喧嘩の最中に出た女房の嘘話を真に受け、間男と誤解した相手の清助を追い回す間抜けな男の話。一旦蹴りがつくが、どうやら此れが縁で、本当の浮気が始まったようである。元許婚の早苗の亭主が金貸しの問題で逮捕される。
よろずや平四郎活人剣 逆転 彦六 おうら 6月号 帳場に座る事はおろか、あらゆる権限を女房に取られてしまった商家の主人が、その地位を取り戻すまでの話。平四郎はその手段として、亭主に家出をさせ女が出来たように仕組む。これにまんまと女房が嵌る。
よろずや平四郎活人剣 襲う蛇 宮内喜平 戌井勘十郎 7月号 名前も分からない浪人に毎日付きまとわれているので、何とかして欲しいと言う侍(宮内)からの依頼。相手は弟が自害したのは宮内のせいだと思いこみ、彼に気付かせその後殺そうとしている事が分かる。誤解であると説明するが聞きいれない。最後は珍しく平四郎が斬る。許婚の早苗と会い久しぶりに話をする。
よろずや平四郎活人剣 暁の決闘 善助 おくみ 8月号 放蕩息子が女に引っかかり脅される話であるが、ここでの物語は僚友北見の積年の恨みの相手・野瀬金十郎を打ち倒す事が中心の物語である。打ち倒した結果、北見は仙台に戻れない人となる。女房は十年後に江戸に来ることを夢見て国へ帰る。商売のほうは桝六が再度登場し、美人局のあくどい犯罪に加担している事件を解決する。
よろずや平四郎活人剣 浮草の女 おなみ 弥助 9月号 女房を早く無くした父親が、最近悪い女に通いだし二百両以上の金を持ち出していると言う。何とかしてくれと娘に頼まれ調べる。その女は実は男と逃げ今は身を落としてしまった別れた女房で、娘の実の母親であった。それを承知で助ける為に金を持ち出していた。最後は少し悲しい。突然元許婚の早苗が尋ねてきて、あわや!と言うシーンが描かれる。
よろずや平四郎活人剣 宿敵 小兵衛 勘七 10月号 昔の事を知っている男がゆすりに来たので、問題を解決する話であるが、ここでの主題は鳥居奉行の護衛、宿敵の奥田伝之丞を遂に討つ話。当時の政治情勢の解説が入る。この物語もいよいよ最後をむかえる。
よろずや平四郎活人剣 燃える落日 早苗 菱沼惣兵衛 11月号 神名・明石・北見は醤油屋を改築して遂に道場を立ち挙げる。早苗が家を出て平四郎のところに泊まる。家出した男を探す二百文の仕事の話がちょっとあるが、ここでの話しは、早苗の亭主菱沼から去り状を取り、晴れて二人が夫婦になる迄を描く。天保の改革の終焉を伝えつつ物語は終わる。天保14年閏9月13日の夕暮れ。
龍を見た男 帰って来た女 藤次郎 おきぬ 小説宝石
82年1月号
世間知らずでヤクザ物と出ていった妹。体を壊し瀕死の状態になった為、大金二十両を出してやむを得ず助けるがその後もやくざな男に付きまとわれ困り果てる。が、口の利けない音吉の力で『おきぬ』は立ち直る。どうしても切れない兄妹愛、それを理解する女房。夫婦の懐の深い思いやりがいい。
龍を見た男 おつぎ 三之助 おつぎ 問題小説
82年6月号
商売の立直しの為、借金の帳消しをしてくれると言う商家のあばずれ娘と結婚する話があるが。水茶屋でふと見かけた幼なじみの曰く付きの娘おつぎ。昔を恥じて心が動き彼女を捜し求める。それが己の一番の幸せだと信じて。川掃除の老人の話は、エッセーのハヤナイ爺さんの件をふっと思うが・・・。
龍を見た男 龍を見た男 源四郎 おりく 山形新聞
75/10/5〜16
神を信じない変わり者の漁師、自分勝手な漁をしているが、海で迷いその時出現した光によって救われる。羽前の国の善宝寺にまつわる縁起からの題材。エッセーのなかに関連する寺の話がある。表題作であるが他の作品とはジャンルの異なった魅力のある作品。
過日(2004/4)善宝寺を訪れた際、藤沢さんの書かれた文章があった。生原稿が展示され、印刷物も頒布されていたので頂戴してきた。エッセー集にもないと思われます。藤沢さんとしては実にめずらしい書き物です。善宝寺を訪れる機会がありましたら、ご一読をお勧めします。著作権の関係で内容は掲載いたしません。
龍を見た男 逃走 銀助    問題小説
82年12月号
小間物屋が表看板であるが、実は泥棒の銀助。仕事の帰りに知り合いの岡っ引に咎められ慎重になる。この場所もしおどきだとショバ替えを考え、ふとした事から赤ん坊をさらい岡っ引の家にそっと置いて逃走する。子供のいない岡引は赤ん坊をどうするか。ユーモアのある話。
龍を見た男 弾む声 矢野助左衛門 満尾 週刊小説
82/2/26日号
隠居して夫婦二人の生活。そこに出現した子供の呼び声に楽しみを見出したが・・・。不幸な身の上の子供は結局姿を消す。武家の親子の行き違いを絡めた味のある作品。『小鶴』と一味違うか?。
龍を見た男 女下駄 清兵衛 お仲 小説宝石
83年1月号
お互い再婚の夫婦。女房の動きに不審を抱くが、弟を諭しただけのこと。他人のチョッとした囁きで、猜疑心が生まれてしまう男の心理がうまく描かれている作品。下駄職人の仕事に対する拘りもよい。人間とは実に弱い生き物であることをしみじみと感じさせる作品。
龍を見た男 遠い別れ 新太郎 おぬい 月刊カドカワ
83年6月号
借金で店を手放さなくてはならない状態になった新太郎。今では立派なお店の女房になっている昔捨てた女おぬいと偶然に会う。色々迷うが、結局人を傷付け逃走する。これも人間の最低の意地か。落ちぶれても最後の意地を通した男のようでもある。
龍を見た男 失踪 徳蔵 おとし 問題小説
81年12月号
年老いた父親に手を焼く夫婦。突如いなくなった父親に対して、金をゆすりに現れた悪人と面白い対決をする。ユーモアのある話。『拐し』(神隠し)と共通点があるような作品。堅実な夫婦、しっかりものの女房に素晴らしい味がある。ここでも親子愛が描かれる。
龍を見た男 切腹 助太夫 甚左衛門 オール読物
83年2月号
親友でありながら仲違いした二人の武士の友情を描く。切腹した甚左衛門の切腹原因を助太夫が親友として調査する。そして・・。最後甚左衛門の妻『満津』の言う言葉が藤沢作品の真髄であろうか。中篇作品にもなりそうな題材。秀作。本単行本の中では『龍を見た男』『切腹』の二作品は異質の作品である。
単行本無1   振子の城 最上出羽守義光    歴史読本
78年4月号
単行本、文庫共に未収録の作品。(藤沢周平全集第6巻にのみ収録)昭和22年藤沢周平氏が山形師範の頃、通学途中にある専称寺の大きさと静けさが時々気になった。こんな書き出しの為思わずエッセーかと思ったが・・。最上出羽守義光が、隣領の白鳥十郎の殺害をはじめとして、血で血を洗う策略を弄し、五十七万石の大大名になった経緯から、これを守る為、振子のように揺れながら平衡を保ってきた努力。そして彼の死後、最後は一万石に没落する迄を描く短編。この作品は藤沢さんの作品の中では、その形式が極めて特異で小説と言うよりも歴史解説書的である。
単行本無2   北斎戯曲         投稿作品。単行本、文庫本の出版無し。未読。オール讀物新人賞候補。『暝い海』と関連があるかもしれない。
単行本無3  蒿里曲         投稿作品。単行本、文庫本の出版無し。未読。オール讀物新人賞候補。オール讀物2015年4月号で本作品の情報が公開された。 ご遺族に残されていた資料が発見され、草稿枚数およそ200枚で 資料の中では最も多かったようである。作品名は『こうりきょく』だそうで 、中国にある山の名で、死人の魂が留まると考えられている場所とのこと。 内容的には、後に発表された『又蔵の火』と同じ史実をモチーフにした作品 のようである。今まで手掛かりが全くなかった本作品の様子が判明し、 全ての作品が、それなりに理解できるようになり喜ばしい事である。 『北斎戯曲』に関しては具体的な資料は存在しないものの、それなりに 想像できるからである。
単行本無4   閑古斎の壷 閑古斎・
津田門十郎
 お新  報知新聞
73/11/26
〜73/12/2
単行本、文庫本の出版その他全て無し。報知新聞バックNOを調べた結果判明した作品。本所亀沢町の北の裏店に住み、小料理屋「染治」に通い勤めをしているお新。長屋の隣に住む占い易者の「閑古斎」。「閑古斎」に好意を寄せているお新ではあるが、彼は藩を脱藩した浪人で、他の仲間12人と、ある野望を抱いている。「運座」と称して、時どき大勢の仲間らしき者が彼の部屋に集まる。その彼が大切にしているものが「壷」であった。お新は壷に関心を持ってしまう。
そして、掃除にかこつけて、壷の中身を見てしまう。そこから始まる意外な物語の展開。発見の経緯はこちらを
単行本無5   赤い夕日           投稿作品。単行本、文庫本の出版無し。未読。読売新聞、短編小説賞応募作品で選外佳作となった作品。『橋ものがたり』の同名作品とは別作品であろう。
単行本無6   赤い月           投稿作品。単行本、文庫本の出版無し。未読。オール讀物新人賞候補。